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雨中、吟。

(また雨か)

朝からザーッと優しい音がして、カーテンを開けてみると、案の定生憎の空模様。

東京の雨は風を伴う、という新たな発見。と言うのも我が地元は、雨の日はやけに静かな雨の音だけするからだ。というか、そもそも雨自体そんなに降らない。(「という」が多い)

雨に濡れるとスーツが臭くなるので、雨にあたらないよう、風の向きに合わせて傘を微調整しようと試みた。が、雨の経験値が人よりも少ないので傘のコントロールは至難の技であり、風の前になす術なし状態である。秒で諦め、横からの風雨をまともに受け流すことにした。スーツはまあ……リセッシュしたらなんとかなるやろ

と自棄糞になったところで、鼻唄一つ聞こえてくる。在処を辿っていくと、前を歩く女性が傘をるんるんと回しながら歌っている。

少し愉快に思いながら耳をすませてみると、次は別の方角から鼻唄。振り向いてみると、スーツを着た仏頂面の男性が低いハミングを奏でている。


到底混じらないだろう不協和音。間に立つ俺、少し意趣。奇天烈に合唱するVo2人にずぶ濡れ1人。端から見れば、随分と治安の悪い情景だったに違いない


【今日のおすすめ】

wacci  「風」


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