見出し画像

スマホ



気がついた時はベッドにいた。
最初に見たのは、彼女の涙顔。その瞬間に記憶は戻った。
入院していた彼女と外出許可をもらい、デートしていたことを、そして転倒し頭をぶつけ意識を失っていたことを。
お互い楽しみにしていたデートを台無しにしたことに悔やんだが、彼女は無事だったことに喜んだ。

その日から、僕も入院になった。
自由を失われた二人はLINEだけで繋がっていた。
元気が無くても、体調が悪くても、スタンプだけでも会話ができた。
写真も送れるから、お互いの様子もわかった。
昼間も夜中も思いを伝え続け、想いになっていった。
そして、僕には入院の不自由さ、辛さが身にしみてわかったことが大きかった。
彼女が毎日こんな思いでいたんだなと。

会えないからこそ、相手のことを考え時間も増えた。
顔が見えないからこそ、文字に想いを乗せた。
スマホが僕たちの愛を深めた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?