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想霊


言葉には霊が宿る。
言葉には不思議な力がある。いい言葉を使っていれば、幸運がやってくる。悪い言葉を使うと不運がやってくる。
さらに言い続けていると現実になる。


私は妻を愛してる、LINEのスタンプなら簡単に送信できるが「愛してる」たった5文字の言葉だけど、口にするのは恥ずかしいものだ。欧米人になったつもりで「I love you」なら言えるのかと思うがこれまた恥ずかしい。
先日、思い切って「いつもありがとう。愛してるよ」と言葉にして伝えてみた。妻は何のことって顔して私を見たが、次の瞬間に互いに笑みがこぼれた。言ってみれば意外と簡単なことだと思えた。ただ、それまでの時間がプロポーズをしたとき以来の緊張感。いやそれ以上だったかもしれない。
やはり言葉には不思議な力がある。無性に妻が愛おしくなり、強く抱きしめた。妻も頬を赤らめ私に身をまかせる。たったこれだけの言葉で夫婦の絆がさらに強くなる。
それから私は「愛してる」を口癖になるくらいに口にするようにした。いつの間にか妻も「私もよ」「私も愛してる」と返してくれるようになっていた。言葉だけでますます愛が深まり互いに相手を想う気持ちが一段とヒートアップしてくる。
想いが強くなると同じタイミングで同じことを言ったり、同じことを考えていた。「今晩何にする?」声を合わせたように「さかな」。「週末どこに行く?」「温泉行って○○カフェ」なんとソプラノとバスのハーモニーだ。

妻と出会った時、彼女は心にたくさんの傷を負って生きていた。その傷を癒すために、薬を付け傷つかぬように幾重にもコートを羽織っていた。そして、自分を偽り必死で強く見せていた。私は生き辛さを感じながら健気に生きる、そんな彼女に恋をした。素直になれない彼女、自分を否定することしかできない彼女、だけど私は必死に愛した。命を懸けて。
その想いがいつしか彼女に伝わり、私は1枚ずつコートを脱がせ、傷口を癒すことができた。そして、そこに現れた真っ白に輝くものを見つけた。
今ではコートはいらない。たまには肌寒い日もあるが、私があたためることができる。だからだろうか、想いが伝わっていくのは。

愛が言葉となり、想いとなり二人をしっかりと繋げている。どんなロープより、どんな鎖より、頑丈な愛が二人を繋げている。
 これから先、絡まることもあるだろう。しかし、絶対に切れることはない。

私が命を懸け妻を愛し続けるから。


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