年子3人忘備録14

[前回のあらすじ] インテリのあーさん、フィジカルなみーこ、独自の言葉を話すイニシャルD。三人三様の個性を発揮し始めた年子3人がいよいよ海外進出する。

初めての家族旅行で訪れた地は伊豆だった。子どもたちが楽しく遊べる場所をセレクトしたのだが、良かれと思って旅程に入れた「動物と触れ合う」では、デシベルスイッチを押すこととなる。目の前に伸びてくるキリンの舌は3歳のみーこにとって刺激的すぎたのだろう。とても餌付けのにんじんなんて持っていられなかった。一方あーさんは、4歳児でも登れるちょっとした山の山頂で吹き荒れる風と果敢に戦っていた。

この旅行を決行したのには理由があった。年子3人の曽祖母で私の祖母であるS様(当時83歳)が、「冥土の土産にどうしてもハワイに行きたい」と、総勢9人での旅行のプレゼントを提案してくれたのだ。そもそも年子3人の父母は海外をこよなく愛する族に属している。こんなおいしい話、誰が断ろうか!この予行として初めての家族5人伊豆旅行が催されたわけである。

とはいえ、伊豆と違ってハワイに行くためには、諸々準備するものがある。年子3人の初めてのパスポートは1歳2歳3歳で取得することになったのだが、写真撮影ですら1日がかりだ。パスポート取得の書類にはあきるほど文字を書いた。このほぼ同じことを数枚記入しなければならない拷問は飛行機の中でも常に発生した。ハワイ旅行をかわきりに毎年海外旅行をするようになった我が家は、年子たちが書類記入可能になるまで、着陸前の拷問はついてまわった。

出発前の書類地獄から解放され、次はお得意のパッキングである。イニシャルDのおむつと念のためのみーこのおむつは、想像以上に幅をとったため、とにかく隙間を見つけてはおむつを滑り込ませた。この絶妙なパッキングがまさか出国時に止められることになることも知らずに。。

すったもんだがあったものの、出国手続きをなんとか済ませた後は、リサーチしていた子どもラウンジで汗をかくほど遊ばせた。とにかくフライト中には寝てほしい。あの密閉空間でのデシベル発動はもはやテロだ。リーサルウエポンである「風邪薬シロップ」も服用させ、飛行機に乗り込む。予想通りイニシャルDはTaxi to runway時点で就寝され、バシネットでしっかりと睡眠をとり、到着少し前にスッキリとお目覚め。これまた予想通りあーさん、みーこはキッズチャンネルを見ながら眠いの眠くないの、やいのやいのしつつも、機内が暗くなり周囲が就寝の雰囲気に包まれた頃ようやく諦めたかのように眠りについた。密閉空間で年子3人のいつ何時どんなことにも対応せねばならぬ母は結局一睡もできずに日付変更線を越えぼんやりと朝日を拝む事になる。

出国、搭乗だけでこの騒ぎである。

滞在先のオアフ島に到着した御一行(曽祖母、祖父、祖母、祖母、父、母、年子3人)は睡眠不足のぼんやりした頭のまま、レイとシャカポーズでお写真の洗練をあびる。ご長老はもちろんこの写真を購入するのだが、全員が疲れ切った顔で決して良い写真とは言えなかった。数年ぶりの海外でテンション高めな父母に比べて年子3人は、暑い、眠い、眩しい、疲れた、お腹すいた、とでも言わんばかりのどんより感を醸し出している。

かくしてハワイ旅行がスタートした。

つづく

次の更新は今週中を予定しています。


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