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「ハナを英語で説明」

「今日はみんなにグループを作ってもらって、
 お題の言葉を英語で説明するワークショップを行いまーす!
 もちろんお題の言葉をそのまま英語にするのはナシですからね!
 他の人に伝わるように説明してみましょう!」

朝イチで頭を使う授業はしんどい。
ギリギリまで寝ているタイプの僕は、まだ脳みそが起動していない。

朝から元気そうなやつが率先してグループができあがっていき
その流れに身を任せることにした。

グループは僕を含めて4人。
それぞれお題の言葉が書かれているというカードが配られる。

「では始めてください!」

『詐欺師』

こんなのどうやって説明するんだよ……
変なのひいちゃったなぁ

与えられたお題に辟易しながら、
まずはトップバッターの説明を聞くことになった。

あまり喋ったことがないやつだけど、
確か根岸とか言ったっけ。

メガネに黒髪。学ランもいじってない真面目な印象。
これといって特徴のない地味なやつ。

「Umm……Umm……」
どう説明すればいいか迷っているようだ。

「This is human.
 I like this.
 ……Umm……」

「もう少し情報をちょうだい!」

根岸が他のやつから責め立てられる。

「Umm……There is it in my classroom.」

「この教室にあるもの?人か。もっともっと!」

あまり英語は得ではないらしい。
幼稚な単語の羅列。
絞り出そうとしているが、なかなか言葉が紡げない。

「これじゃあ、他のグループに先越されちゃうよ!」

僕は別に順位などどうでもいいが、
グループごとに競争するらしいから急かされる

絞り出した彼の声からこぼれた言葉に
僕は驚かされることになる。

「This is my girlfrind!」

え?こいつ、彼女いんの!?

他のグループのやつらにもその声は届いたらしく
教室中がざわついていく。

説明しようにも言葉が紡げず
知っている言葉からチョイスして絞り出したら
思わぬ言葉を言ってしまったのだろう。

顔を赤らめ、取り返しのつかないことをしてしまったと
根岸の表情が物語っている。

それよりなにより
相手は誰なんだ?

教室の時計は動いているはずなのに
僕たちのグループは時が止まったように
お互いの顔を見合わせることになってしまった。

「そこまでー!」

無情にも一人目の根岸でタイムアップ。

状況を察した先生は、根岸のことを思ってかカードを急いで回収し、
相手の名前は闇の中。

お題はなんだったんだ……?

このクラスの中に付き合っているやつがいる。
そんな謎だけを残して疑念渦巻く中授業が終わる。

この後、みんなに聞かれるんだろうな。

そんな同情の気持ちがありつつ、
僕が思いを寄せる「ハナ」もこのクラス。
どうか「ハナ」でありませんように。

神に祈りを捧げたのは
これが生まれて初めてかもしれない。

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