小さな王子さま・第12章~私家版「星の王子さま」~
(※ブックチャレンジの代わりに翻訳チャレンジしました。毎日1章ずつアップしていく予定です。なお、サン・テグジュペリによる原作の著作権は、イラスト・文章ともに保護期間が過ぎています。”自粛生活の友”にどうぞ)
第12章)
次の星には、飲んだくれの男が住んでいた。小さな王子様の、この星での滞在時間はとても短かった。けれどそれは、彼を大いに悲しくさせた。
「ここで何をしてるんですか?」と、彼は飲んだくれに尋ねた。飲んだくれは、彼の前にたくさん酒のボトルを並べていた。ボトルのいくつかは空っぽで、いくつかにはたっぷり入っていた。
「飲んでるのさ」と、飲んだくれは答えた、うつろな声音で。
「なんでお酒を飲むんです?」と、小さな王子様は彼に聞いた。
「忘れるために飲むのさ」と、飲んだくれは言った。
「忘れるって、何をです?」と、小さなお王子様は尋ねた。もうすでに、飲んだくれのことが可哀そうだと感じていた。
「忘れるためだよ、俺がどんなに、ひどいって感じているかを」と、自分の椅子に腰かけて、さらに小さくなりながら、飲んだくれは彼に話した。
「何について、そんなにひどいって、あなたは感じているんですか?」と、小さな王子様は訊いた。王子様は、彼を助けたいと思っていた。
「ひどいって、飲むのがだよ!」と、飲んだくれは答えた。それ以上は何も言わなかった。
だから、小さな王子様はそこを旅立った。彼は、自分が見てきたことが理解できなかった。
「大人たちってのは、本当に、とっても、とっても、ヘンテコなんだからさ」と、彼は自分に言い聞かせた。
(第13章につづく/翻訳・長友佐波子)
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