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小さな王子さま・第9章~私家版「星の王子さま」~

(※ブックチャレンジの代わりに翻訳チャレンジしました。毎日1章ずつアップしていく予定です。なお、サン・テグジュペリによる原作の著作権は、イラスト・文章ともに保護期間が過ぎています。”自粛生活の友”にどうぞ)

第9章)

 小さな王子様は、野鳥たちに助けてもらって自分の星を離れたのだと、私は考えている。彼が星を出発した朝、彼は自分の星を申し分ない状態に整えておいた。彼は活火山をていねいに掃除した。活火山は二つあった。それらは毎朝、彼が朝食を作るのに大活躍していた。彼は、休火山も持っていた。でも彼はこう言うかもしれない、「(いつ噴火するかなんて)けっして分からないよ!」、そして彼は休火山もまた、きれいに掃除した。きれいに清掃されている限りは、火山は優しく燃え続けるのだ、何も問題を起こすことなしに。


 小さな王子様はまた、一番新しいバオバブの若芽を引っこ抜いた。彼はとても悲しくなった。なぜなら彼は、二度とうちに戻って来ることはないだろうと思っていたから。最後の最後に、彼のお花を、彼女を覆うためのガラス器の下に置く準備を整えた時、彼は泣きたくなった。


「さようなら」と、彼はお花に言った。


 でも、彼女は答えなかった。

「さようなら」彼はもう一度言った。

 お花は咳ばらいをした。でも、咳をしたのは、寒いからじゃなかった。
「あたくしが馬鹿だったわ」。彼女はとうとう言った。「ごめんあそばせね。あんなふうに振る舞って。お幸せになってね」

 小さな王子様は驚いた。彼が去って行くことに、彼女が怒っていなかったから。彼はそこで立ち尽くした。何をすべきかが分からなかったのだ。彼には、彼女の優しい愛らしさが理解できなかった。

「あたくしは、あなたを愛しているのよ」と、お花は彼に伝えた。「でも、あなたには決して分からなかったでしょうね。あたくしの振る舞ってきた態度のせいで。でももう、いまや、そんなことはひとつも重要じゃないわ。そして、あなたは、あたくしとちょうど同じくらい、おバカさんだったわ。お幸せにおなりあそばせね……あたくしの覆いのことは気になさらないで。もう、それはいらないわ」

「でも、冷たい夜気が……」

「あたくしは、そんなに弱くなくてよ。……新鮮な夜気はきっと、あたくしに良いことでしょうね。あたくしはお花ですもの」

「でも、野生の生き物が……」

「もしあたくしが、チョウチョに会いたいのなら、ちょっとの芋虫くらい我慢しなくてはいけないわ。チョウチョはとってもきれいだって聞いたことがあってよ。それに、いったい他の誰が、あたくしを訪ねて来てくれるっていうの? あなたはとっても遠くに行っておしまいなんでしょう。それにあたくしは、野生動物なんて怖くはないのよ。あたくしには、このトゲがあるんですもの」

 そして彼女は無邪気に、彼女の四つのトゲを見せた。そして、こう付け加えた。

「ねえ、ぼんやりつっ立っていないで。あなたは、行くと決めていたのでしょう。ならば、お行きなさいよ」

 彼女は、自分が泣くところを彼に見られたくなかったのだ。彼女はとっても誇り高い花だった……。

(第10章につづく/翻訳・長友佐波子)

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