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引っ越し前夜

エサを食べては寝るという豚のような退院後の生活から早くも一か月半が過ぎた。精神科病棟ではあんなにイキイキ暮らしていた私はどこに行ってしまったんだろう。

1日くらい寝なくても平気だったし、毎日運動も読書もして、あなたは一体どこが悪いのよ?って言われそうなくらい元気であったが、体内の日付が3日くらいおかしかったり、口から出てくる言葉がむちゃくちゃだったりとか、閉鎖病棟内で全裸で走ったり、歌ったり、踊ったり、割と活動的に動いてた気がする?

痴呆のおばあちゃんの娘2人を患者と演技をして、記憶を強制的に思い出してもらうとか、思い出すとお腹を抱えて笑い転げそうなことばかりやっていた。私にとっては閉鎖病棟の中しか安全なところはなかった。

親や家族がくると顔が引き攣って、ロボットみたいになってしまった。ほぼ孤児に近い環境で、周りの入院患者たちがえらく驚いていた。ご飯も3食まともに食べられてなかったので、しばらくはありがたくて泣きながらご飯を食べていた。

入院中は入院中でストレスフルだったのだが、それも懸命なリハビリで割と早めに治ったのでありますが、退院してからが地獄みたいになった。独りで眠る夜の寂しさに毎晩シクシク泣いたし、悪夢か現実かわからないような幻覚にも悩まされた挙句にODで3日くらい記憶飛ばしていた。

辛過ぎた。ひょんな事で元彼に月夜のデートに誘われて一年ぶりくらいに再会した。もうたまらず、助けてくださいと頭を下げた。まるで夢みたいに抱きしめ合って時間軸がおかしなことになったみたいに感じた。久しぶりに会ったのに、過去に戻ったかのような感覚。ストロベリームーンの魔法にすっかりヤラれた。

男性不信になってる私の頭を撫でて、抱きしめてくれる。はやく寝たら?と、トントンしてもらう。おかげで眠る恐怖はその日から少しずつ溶けてきた。だいぶ元気になってきた頃にバッサリと元気になってきたら関係の継続はないと言われて大泣きしてしまった。

彼は私の心から噴き出す血を止血する為に側にいてくれるだけなのだった。その事が寂しかった。でも、少しずつその事も受け入れつつある。

引っ越ししたら、他者に依存した生活ももう少し考えなくては。ひたすら脳疲労を取るため寝てばかりいる。傷ばかり反芻する記憶回路にハマりこまないようにしないといけない。

はやく元気にならなくちゃ。そして、これ以上彼の人生のお荷物にならないようにしないと。彼のいない世界に戻れるのかまだ不安だけどね。

なるようになれ、としか言いようがない。