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【感想】Hマートで泣きながら

"自分の10パーセントは自分のために取っておきなさい。"
誰かをどんなに愛していると思っても、また愛されていると思っても、けっして自分のすべてを捧げてはいけないと、母はわたしに教えようとした。万が一のとき、頼れるものがあるように。
"お父さんにだって、全部はあげない"と、
かならず最後に付け加えた。(本書より)

目頭が熱くなったあと、お腹が鳴る本
"Hマートで泣きながら"を読みました。
オバマ元大統領やたくさんの読書家の方々が推薦していた本書。むずかしいことは書かれていないので友達と話しているような感じで気づいたら読み終わります。
若くして母を介護し、失う過程がとてもリアルに描かれています。記憶をたどり、YouTubeでレシピを探し、韓国料理が喪失を癒していく描写は読者の心にも沁み入り、お腹がぐぅと鳴ります。
レシピを参考にした韓国料理のYouTuberと写っている写真を作者のInstagramで見ると更にほっこりなります。

自身の音楽活動などが原因で母親と仲違いして、病気を機に心と心のつながりを気づき直してしていく過程に誰しも共感があると思います。
そこから音楽活動や執筆が軌道に乗っていくストーリーも地続きで語られるのがとてもリアルです。
ピザ屋さんでのバイトの話や、新婚旅行からアメリカに帰る際にニューヨークで就職活動をしたり、日本とは違う仕事観も面白いです。
これから韓国で1年間語学を勉強する予定があるみたいで、"コンビニ人間"を読んでインスパイアされて、韓国のコンビニで働いてみたいと考えてるのも面白い方だなぁと思いました。

愛する人々の中で鼓動をつづける愛情が、母の芸術だった。一曲の歌や一冊の本に負けない世界への贈り物だった。(本書より)

読みながら自分の家族との向き合い方や、食からつくられる自分のこと、今までの思い出が、フィルム写真のように情景が浮かびます。

本書に出てくる著者の1stアルバム
Japanese breakfast "Phycopomp"
アルバムジャケットの向かって左がお母さんのチョンミさん。

読みながら音楽を聴いたり、Instagramを見たり、立体的に感動できる読書体験でした。

みなさんも良き読書体験を。

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