Only Time
私には青春という言葉にぴったりの時間を過ごした時が人生の中でいくつかある。
その一つに、この国に来て数年たったころ。
初めて働き始めたレストランで仲良くなった友達ジェン。
年齢は彼女のほうがずーーーっと下で、でも育ってきた家庭環境や、家族構成が同じで、兄弟の性格も似ていて。自分たちの無鉄砲な性格も似ていて。仲良くなるには時間が必要なかった私たち。
とってもおしゃれで、きれいで、メークアップも上手で。男気があるジェン。
よく仲間内で飲みに行く事が多かった夏。飲みに行くときは、ジェンの家に行き、着ていく服を決めて、化粧をし直して、髪もジェンが私の髪をストレートにしたりカールにしたり。あーだこーだ言いながら過ごした時間。彼女のお母さんはそんな私達を見て、よくあきもせず、と笑っていた。
そして帰ってくるのも一緒。
あの時、なぜ、朝焼けを見ながら、ファームランドの真ん中で、車を走らせていたのかは覚えていないけれど、ラジオから流れてきたエンヤの
「Only Time」
だけは鮮明に覚えている。
この時初めてこの曲を聴いたのだ。彼女の澄んだ歌声とオレンジ色の朝焼けがあまりにもマッチしていて、お酒が残っていたせいか感情がこみあげてきて、涙が頬を伝ったのを今でも覚えている。ジェンも全く同じだった。
「こんな景色、生まれて初めて見たかも」
静かにつぶやいた彼女の言葉。後部座席では、男友達のブラッドのいびきが凄くて、二人で笑ったけれど。
当時、労働ビザの取得のために必死だった自分。
歌の最後の
Who knows ? Only time......
のフレーズが心の中に響いた。そう、時間だけが知っているのだ。あの朝焼けを見て、自分の進路をしっかりと決めた。学校をでて、またこの街に戻ってこよう。と決心したのも、あの朝焼けを見た朝だった。
親友のジェンと見た朝焼け。エンヤの透明な歌声の「Only Time」
自分の今があるのは、この瞬間のおかげだと、確信している。
先日偶然にもカーステレオから流れてきた Only Timeに心がきゅっとなった。そして涙がこぼれた。
本当にホロッと。
あの時からもう、「ふた昔」の月日が流れたのだなあ、と改めて実感した。
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