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祖父

私は父方の家族の話をする時、気付けば祖母の話ばかりをしているような気がする。

皆さんも私の記事を読みながら、もしかすると感じていたかもしれない。

祖父は?と。


祖父の話があまり出てこないのはなぜか。

それは端的にいうと祖父との関わりがあまりなかったからだ。

祖母は今も健在だが、祖父は私が小学校低学年の時にこの世を去った。私にとって最も早くに亡くなってしまった身近な人だった。

私が小さい頃は祖父母は共に住んでいたのだが、気づいた頃には祖父と祖母は別居していた。理由はよく知らないが、私が小さい頃から祖父と祖母はあまり仲が良くなかったように思う。祖父母の家に遊びに行っても、2人はよく言い合いをしている、そんなイメージだった。

「北と南」という記事でも述べたが、祖父側の家族にはいわゆる「北」の人がいた。最近になって父から聞いたことだが、祖父側の親族に総連のお偉いさんがいたらしい。もしかすると祖父も私の知らないところで、完全に「南」の人だった祖母や父とは合わない部分や揉めた部分がたくさんあったのかもしれない。


そんな理由で、私は祖父とはあまり関わったことがない。祖父のお葬式では涙は一粒も溢れなかった。ずっと会っていなかった人が自分の知らないところで突然いなくなってしまった、そんな風に、まるで自分には関係のないことのようにしか感じることができなかった。

祖父は家にいてもずっと無言でテレビを見ていたイメージだ。私は両親が共働きだったこともあり、しょっちゅう祖父母の家に行っていたが、祖父と対話した記憶は全くない。だから祖父がどんな人だったのか、恥ずかしながら全く知らない。私が祖父について覚えている(知っている)のはタクシー運転手をしていたということくらいだ。ただ、それだけだ。

当時は、祖父はなんと寡黙でつまらない人なのだろうと思っていたがするが、今考えてみれば、祖父はもしかすると複雑な理由がたくさん絡まった、辛い環境の中にいたのかもしれない。


今になって祖父のことを無性に知りたくなる。

祖父と関わりたくなる。

祖父はどんな人だったのだろう。

私のことをどんなふうに見て、どんなふうに考えていたのだろう。

祖父はどんな人生を歩んだのだろう。

全部知りたい。祖父を受け入れたい。


ちなみに、このnoteによく登場する曽祖父母はこの祖父の父と母だ。祖母方の曽祖父母は私が生まれる前に亡くなってしまったと聞いている。

色々揉めていたものの、家族なものは家族である。父は私を曽祖父母の家によく連れて行ってくれた。だからこそ、曽祖父母との思い出もたくさん残っている。今思うと、曽祖父母の家に行く時には父の兄弟など親族集まって訪れていたのだが、その場に祖母がいたことは決してなかった。大人になって考えられるようになること、分かるようになることというのは本当に多いものだ。家族の中で分断が起きていたのかもしれないと、今なら理解できる。

私の苗字も本貫も本籍地も、全て曽祖父のもので祖父のもので父のものだ。だから、いくら関係がなかった人とは言え、祖父のことを考えられずにはいられないのである。

そんな祖父に、もし今会えたなら何を伝えるだろうか。


おじいちゃん、ハラボジへ

お久しぶりです。もう何年もお墓参りに行けていなくてごめんなさい。しばらく会っていない間に、私は韓国語を話すようになり、自分のルーツを辿るようになり、来年には韓国に留学することになりました。おじいちゃん、びっくりでしょう。おじいちゃん、実はずっと会えないままおじいちゃんが亡くなってしまったこと、すごく悔しく思っています。あの頃は小さかったから貴方に自力で会いに行くなんて出来なかったけれど、それでも亡くなったことを知ってから、もっと貴方に会いに行けばよかった、もっと貴方とお話しすればよかったと後悔しました。小さい頃の私は無知で無神経だったから、貴方のことを無意識に傷つけていたかもしれません。ごめんなさい。貴方がどんな風に思っていたのか、何を考えていたのかは分かりませんが、私は今でもおじいちゃんと仲良く出来なかったことをずっと後悔しています。おじいちゃんはきっとひいおじいちゃんに似て、優しくて真面目な人だったのでしょう。出自や生まれた時代の影響もあり、きっと多くの苦労を重ねて生きてきたのでしょう。おじいちゃん、もっとおじいちゃんのこと知りたかったよ。おじいちゃん、私来年自分のルーツを辿る旅に行こうと思っています。おじいちゃんと同じ私の本籍地に行ってみたら何かおじいちゃんやひいおじいちゃんのことを知れるでしょうか。そもそもおじいちゃんは済州、いや韓国自体に行ったことはあったのでしょうか。貴方のことを何も知らなさすぎて、気になること・知りたいことがたくさんです。おじいちゃん、時を戻せるのならまたあなたに会いたいです。もっと仲良くしたいです。こうして綴ったってきっと貴方には届かないのだろうけど。だけどおじいちゃん、私は貴方が思っているより貴方のことが好きですよ。それだけは伝わってほしいな。天国ではゆっくり休んでね。またお墓参り行くからね。

おばあちゃんと済州島に行きたい!