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猫になってみた

退屈だったんで、通りすがりの猫に入ってみた。

ちょっと波長を合わせて、猫の意識に部分的に乗っかる。

昔の修業したえらいお坊様たちが教えてくれた方法なんだが、相手の意識も働いているので、思い道理に動かすというわけにはいかない。

ただ、面白いので時々他の生き物の意識に乗っかって冒険を楽しんでる。

気分が落ち込んだ時や、悩み事に疲れたとき、これをやると感覚が激変していい刺激になる。

今日の猫はまだ子猫みたいだ、

目の前の動くものに、強烈に興味を持つ。

また、動きが早くて、こっちが意識から振り落とされそうになる。

塀の上に飛び乗ったと思ったら、スズメたち目指してダッシュ!

足を踏み外しそうになって、大慌て。子猫の恐怖の感情がダイレクトに伝わってくる。

いやー!ジェットコースター以上だ。

目もよく見えてるし、耳にもたくさんの音が聞こえてる。感覚が鋭敏化してる。

何よりドキドキ感がすごい。この子、必死でいろんなものに向かっているんだな。

でも、ワクワクして楽しい。

あ、いつも構ってくる犬の匂いだ。飼い主のおじさんがリードを握っているんで、走って来たくても来れないで前足バタバタさせてる。よし、安全安全。

さて、おなかがすいたと思ったらある家の庭に入った。

そこには一人のおばあちゃんが餌の用意して待っててくれていた。

子猫は、安心し切って夢中でご飯を食べる。なじみの場所のようだ。

うまいなあ!味よりも子猫の喜びが直に伝わってくる。

食べ終わって見上げると、おばあちゃんのニコニコ顔。

おばあちゃんが何か話しかけている。子猫は言葉はわからないが、おばあちゃんの気持ちは伝わっているのがわかる。

すごく嬉しい。この子、おなかすいてたんだ。

この子、おばあちゃんに今はいないお母さんを感じてるようだ。

もう子猫のお母さん居なくなってかなり経っているみたい。

この子、一人で怖くて、おなかすかして、必死で生きてきたんだな。

子猫の気持ちが伝わって、ジンと来てしまった。

今日はこのくらいにしておこう。

スッと離れて自分の意識に戻った。

心はなんだかホッコリと満たされて、気分がいいい。

子猫とおばあちゃんの幸せを願って今日のちいさな冒険を終えた。


絵 マシュー・カサイ「窓辺」色鉛筆


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