『孤独な夜のココア』の感想
『孤独な夜のココア』は田辺聖子さんの著作です。
12話の短編は、どれもすぐに読めるのに何か心に引っかかるようなお話が多かったです。
1話目の『春つげ鳥』では、既婚者の男性と付き合う女性が主人公です。
なんでも買ってもらって、家まで買ってもらって、家具も全部好きなものを選ばせてもらえて、時代の違いにカルチャーショックを受けてしまいました。
お付き合いしてる内にこんなにいろんなもの買ってもらえるとか。
しかも既婚者の男性っていう説明がさらっと出てきて、「えっ」って言っちゃった。
今の時代、不倫は犯罪と同じレベルで世間から非難されますし、奥さんから訴えられる危険性もあります。
さらに衝撃の結末で、あっさり終わっちゃう。
この1話目から私は、田辺聖子さんの世界にハマってしまうのです。
『孤独な夜のココア』というタイトル通り、夜寝るまえの一冊にしていました。
一日一話。
多幸感いっぱいになるお話もあれば、苦くてあっさりしたようなお話もあって、この本好きだなって思いました。
毎回主人公は女性ですが、同じような人は一人もいなくて、いろいろなタイプの女性が登場します。
『エイプリルフール』は、軽く付き合っていた女性が妊娠して、相手の男性に軽く妊娠したことを告げたら、エイプリルフールだったために冗談と言われます。
女性も冗談って言って、一人で育てる算段を考えていたら、男性から連絡が
あります。
さっきのは本当のことじゃないかと思い直して、妊娠を喜んでくれるのです。
リアルだと結構重くない?この状況。
一人で淡々と婦人科へ行く女性は、軽くて、でもいざ出産日を聞かされると急に現実感が出てくる場面はかなりリアル。
それでも軽く乗り越えようとする主人公のおかげで、ストレスなく読み進められました。
最後に相手の男性が妊娠を喜ぶ場面で驚くほど多幸感を感じることができました。
不安不安からの安心が満たされたような気持ちになる原因かな?
お話の感じから、バブルのころかと推測するのですが、バブル時代って、すごくうらやましい時代半面、セクハラは日常だし、タバコを吸う方は多いし、結婚しない選択肢はないし、私には今の時代の方が合ってる気がします。
解説は綿矢りささん。
上記の綿矢りささんの言葉に尽きるなと思います。
主人公が被害者意識がない、自立しているから軽く、上品で魅力的な主人公になるのだと思いました。
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