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『愛についてのデッサン』の感想

古本屋さんのイラストが素敵な装丁に惹かれて、図書館でお借りしました。

『愛についてのデッサン』を読み始めてから、なんとなく昔っぽい価値観があるなと思って、著者の方を確認してみたら、野呂邦暢さんという1937年生まれの方でした。

めっちゃ納得しました。

特に古本屋の佐古啓介さんが主人公の物語に出てくる女性がほとんど同じようなしゃべり方で、しかもちょっと時代がかったようなセリフばかりだったので、気が付きました。

古本屋さんの話は、本にまつわる人間関係やちょっとした事件のお話のため、本好きの私はとても楽しめました。

古本屋さん、結構費用かかるんだなぁっていうのと、やっぱり万引きはいつの時代もあるんだなぁと悲しい気持ちになりました。

その万引き事件のお話『本盗人』に出てくる女子大生が可愛かったんですが、ちょっと心配になります。

『愛についてのデッサン』に出てくる女性が皆素敵だなぁと思って読んでいました。

同じような話し方なのに、昭和の女性の美しさを感じることができます。古き良き美しさ。

『愛についてのデッサン』とは異なる短編『恋人』では、また違う雰囲気を持つ女性が登場します。

あとがきでも岡崎武志さんがお書きになられているように、フランス映画っぽいと思いました。これだけ雰囲気が違って空気が濃い感じ。男女の駆け引きでした。大人~。これはこれで好き。

野呂邦暢さんは、戦前戦時中の方なので他の短編『世界の終わり』『ロバート』『隣人』には、戦争の香りのする要素がたくさん感じられます。

このあたりの時代の小説はあまり読んでこなかったので、かなり新鮮だったのと同時に、ちょっと怖さを感じました。

しかし『鳩の首』は、もっと怖い。

今でいうところのギフテッド?の小学生の家庭教師をすることになった主人公は、生徒のサトル君に勉強を教えるのに手こずります。

動物のことに関しては、異常な好奇心と知識量。家でも多くの動物を飼っていました。

サトル君の中で何があったのか、最後まで分かりませんが、怖かったです。

考察好きな方の考察が読みたいと思いました。


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