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過干渉と境界知能

 先日 若い母親が生まれたての赤ちゃんを自宅で出産後すぐ殺してしまった事件を知りました。
 概要は両親がアルバイトをしながら一人暮らしをしていた娘を、生活が荒れているために自宅に連れ戻した2ケ月後に、両親共妊娠していることに気がつかないままに娘が出産し、死体を自宅のクローゼットに放置し、その2週間後に腐敗臭から殺人及び死体遺棄が発覚したというものです。
 同様の事件はこれまでも報道されていましたが、今回の事件も父親は不明で、両親を含め周囲に妊娠の事実を言い出せないために起こった悲劇とのことです。
 情報によりますと、両親の一人娘に対する過干渉、事件後発覚する本人の境界知能が相関してもたらした事件と言えます。
 元々、自分を表現するのが苦手で、自己評価が低く、いざこざを見るのが嫌いという性格の子どもであったとのことですが、境界知能であることを認識(グレーゾーンであるために本人、両親共疑わず検査を受けていない。)していなかったために、努力が足りない子どもとして、小学校時代に父親がつきっきりで恫喝しながら学習指導したり、本人が望まない習い事を強制したり、進学先を親の一存で決めたりした結果、両親を嫌悪すると共に、叱られることが嫌で本心や真実が言えなくなり、虚言や不正を繰り返すようになってしまっていたとのことです。
 境界知能で社会生活に困難な面があるのに加えて、両親からの圧力により追い詰められた心情があったことが推察されます。
 まず過干渉についてですが、不登校の要因の一つでもあり、社会的自立のための自我形成、自己肯定への阻害に繋がるリスクが大きく、身近でも親子関係の破綻(想像以上に多いと感じています。)の重大な要因として聞くことも多く、社会的課題とも言えます。
 そして境界知能ですが、全人口の約14%いると言われ、問題が社会的にスルーされがちですが、一見正常知能との差が分かりにくいために支援の隙間にあり、社会対応の困難さから犯罪に結びつくリスクが高いと言われています。
 今回の事件は個人の問題であると共に、二つの社会的課題から生じており、本人に同情すべき点があることや認識や手法が間違っていたとは言え、両親は愛情を持って子育てされていたことを思うと、課題に対する対象者の多さや深刻さについての社会的認識の向上や、支援体制の強化、知能検査の早期受診等の適切な対応が必要であることを痛感します。
 本件は実刑とはなりましたが、生い立ちや両親の支援(状況を踏まえて、福祉専門家を間に置いて距離を持った支援)、福祉専門家による支援体制の確保を考慮した温情のある内容でありました。

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