要支援な母 と お金

認知症になると、お金に執着が出る、とよく聞く。
「盗まれた」と周りを疑うようになる。
母もお金について、教科書通りの症状が出た。

・家に泥棒が入る、と言う
・住んでいる家の価値が気になる
・通帳を何度も確認する
・貴重品を取られまいと移動し、失くしてしまう
・自分の財産について、何度も確認してくる

毎日、何度も、母から通帳や証券、不動産について電話が来る。
毎月の収支を考えれば、不安になる必要はない。なのに。
母からの電話だ、とわかると私はイヤホンをつけ、家事をしながら電話に出る。
安心させることが第一で、正論で反論してはいけない、と経験で学んだ。

何でお金なんだろう?

私が知っている母は、貯金も好きだが、使うのも好きな人だった。
本や食材については節約とは程遠く、好きに使っていた。
母曰く、子供の頃はお小遣い帳をつけるのが好きなタイプだったと言っていた。
大人になってからは、ざっくりタイプで、年間の収支がマイナスにならなければオーケー、くらいの管理だったように思う。

今の母は、お金の不安に取り憑かれた時、顔つきが変わってしまう。
その時の顔が、私は大嫌いだ。

目が不安に揺れ動き、安心するかと対応策などの正論を言うと過剰な反論をされる。
不安な気持ちに付き合うか、ゆっくりと安心していい理由を伝えるしかない。
だが、何度も何度も同じ内容で「不安だ」と言う電話が掛かってくると
正論を言って終わらせたくなる日もある。
そうなりそうな時、私は電話に出ない。
自分のストレスになるようなら、背負ってはいけないと決めた。
これも母が祖母を介護している姿を見て、学んだことだ。

「お金」って何だろう。と最近思う。

お金があることで、不安になる。
無いよりも、有るほうがいいけど、守りに入った途端、呪いを受ける感じ。

今の母は
『毎日のように家に泥棒がやってくる』だから『管理しきれない財産は子供たちに託してしまおう』と考えている。
「ずっと放置している証券口座の名義をあなたに変更して」など。
もちろん口座の名前を子供に変えるなんてできない。
だけど、人に盗られる不安が有る反面、子供にはわけたいと思えるのなら、まだ今はマシかなとも思ってしまう。

世界共通で、認知症の人はお金への執着が増すのだろうか?
食べ物を買えない、サービスを受けられないことが、命に直結する都市部の老人だけの話なのか?
「貯める」を推奨した教育の結果なのだろうか?
近所の絆が強く、信頼できる家族が近くにいて、自分で食物を育てた経験がある人は、お金ではなく、別の執着が見られるのだろうか?

私は金銭的なセンスが母に似ていると思う。
私もこんな風に、不安に取り憑かれてしまう日が来るのだろうか。

その考えのおかげか、今は前よりも思い切ってお金を使う事を楽しむ事が出来るようになった。
親はいくつになっても身近に見本を見せてくれる。

どうか不安に囚われないでほしい。
残りの人生を楽しく、パッパとお金を使って満喫してほしい。


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