シンヤがバイトを

中学時代は抑うつ傾向にあり、出席できない時が短期間だがあったし出席しても夜眠れないため居眠りが多く勉強についていけなかった。

中3夏休みから猛特訓で有名な塾に奇跡的に入る事ができ、本人も休み無しで頑張ったおかげで学力はかなり上がった。

とはいえ眠くなるまで我慢する、無理やり早起きしてリセットし夜眠くなるまで待つ、市販の睡眠サポートの薬を使ってみる、日光に当たる、運動するなど思いつく限りを試したものの睡眠障害がまったく改善せず、全日制をやめて定時制(夜間)への進学にシフトチェンジした。

無事入学し、授業が始まると中3の努力のおかげで定期テストではかなりの高得点を取るように。
部活はないが役員などの学校活動も参加するようになった。

在校生の多くがバイトをしており、学校側もバイト推奨(本人がバイトしていると学校のテキスト代等の補助があったり、社会経験を積む勉強にもなるため)。
シンヤはバイト先に埋没(何も言わず男子としてやっていく)が良いのか、聞かれないうちから全てを話した方が良いのか悩んだりもしてなかなかバイトに踏み出せなかった。

が、お小遣いをごく少額しか渡していなかったのが良かったのか、お年頃に欲しい物がまったく買えないのが辛くてバイトするようになった。これだけは想定外だった。

面接時にはトップにはFTMだと話したと言う。現場の仲間には何も言っていないそうだ。
トップの方が大変理解ある方で、体調を気遣う言葉と配慮すべき点を聞かれた程度で他に何も問題なかったという。
つくづく周囲の人の理解度は相当影響力があると感じた。

どうしてもバイト先のエントリーシートに通院や使用薬剤の有無、シフトに入れる曜日や時間帯など記入しなければならず、内緒にするのは難しかったと思う。

FTMの方のバイト歴の情報を調べたら、身内や知り合いがやっている店や会社の手伝いをしていたり、埋没していたりと様々だった。

シンヤの場合はまったく無関係の会社だが地元から遠く離れた場所ではないため、客と顔を合わせない職種に絞った様子。と言っても共に働くバイトの子に同級生や男子学生になる前を知っている人がいないとも限らないので制服の有無(あれば男女同じ)や性別により仕事内容が違う傾向にあるものなどは結果避けられている。

知り合いはいるようだが同学年だとほとんどが全日制に通っているため、シフトがかぶる事が少なく、嫌な事を言う人もいなく、パートのおばちゃんには厳しく指導されながらも可愛がられているようなので頑張ってうまくやっているようだ。

バイトの初任給では私にカフェでランチをおごってくれた。

いつも通院時には辛い検査の後、ご褒美の美味しいコーヒーやら遠くの病院まで行く時は予約時間に遅れないよう早めに出発して現地でお茶を飲み時間調整をしていた。特になかなか進展しない通院初期は楽しみがあった方が私も頑張れると思ってやり始めた。

それを気にしていたのか「今までいつも病院代だけじゃなくてコーヒー代も払ってもらってるから、初任給出た時ぐらいは俺が出す」と自ら言っていた。

コーヒー代、ランチ代はほぼ私の給料からではあるけどたまに手持ちがなくて家計から出した事も。それは父親からの出費だが、「いつも運転したり一緒に付いてきてくれるから」という理由で奢られるのは私だけとなった。

結果、シンヤの1番お気に入りの雰囲気がお洒落なカフェでランチをおごってもらった。今までで1番美味しいご飯だった。
きっと泣く(私はかなりの泣き上戸)と公私共に言い切っていたので必死に我慢したから涙目ぐらいで済んだ、と思っている。

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