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漣健児のカバーポップス革命

漣(さざなみ)健児こと草野晶一は、父・草野貞二が経営する新興音楽出版社(現:シンコーミュージック・エンタテイメント)から雑誌『ミュージック・ライフ』を復刊し初代編集長を務めていた。
洋楽ポップスの英語歌詞を雑誌で紹介する時に、その翻訳を書いていたら、「この曲、あの歌手に似合うんじゃないかな?」とか思うようになり、日本語詞を書くようになったと言う。最初は、訳詞家や作詞家などになる気はまったくなかったらしい。
一番最初に坂本九に書いたのは「ステキなタイミング」で、彼にジミー・ジョーンズの歌を紹介したのは、声の感じが似ていると思ったからだそうだ。その話をしたら、坂本九のマネージャーも同意したと言う。
そのころ九ちゃんはまだ売れる前で、「出演しているジャズ喫茶かなんかで歌詞カードとして使ってくれれば」程度にしか考えていなかったと、後になって証言している。
だからと言ってはいけないのかもしれないが、肩の力が抜けて洒落でスラスラ書いたような歌詞になっている。

ステキなタイミング

オー ユー・ニーズ・タイミング
アー ティカ ティカ ティカ グッドタイミング
トカ トカ トカ トカ この世で一番かんじんなのは
ステキなタイミング

目の玉ギョロ キョロ 光らせた
教師の目の前で
カンニング素早くやるのにも
いるのはタイミング

オー ユー・ニーズ・タイミング
アー ティカ ティカ ティカ グッドタイミング
トカ トカ トカ トカ この世で一番かんじんなのは
ステキなタイミング

僕の可愛いフィアンセの
目をごまかしながら
コッソリ浮気をするのにも
いるのはタイミング

(リフレイン)

火の玉投手のドロップに
バットをちょいと合わせ
逆転ホーマー打つのにも
いるのはタイミング

(リフレイン)

ガンコオヤジが可愛がる
箱入ムスメを
コッソリ デートにさそうのも
いるのはタイミング

(リフレイン)

文句無しに軽快で面白い。Oh, you need timing をそのままカタカナにするなんて、すごく斬新だ。
カンニングも浮気も野球も頑固おやじも、元歌の歌詞にはまったく出てこない。訳詞というよりも替え歌と言った方がよい。自由な発想で愉快に書いているので、聴く方も心地よい。

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