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#20 入院病棟の看護の仕事

 今回は私の看護師経験の中の大半を占める、「入院病棟の看護師の仕事」についてどんなことをしているのか、簡単にお伝えしたいと思います。

 *これは、看護師の仕事を知らない方に向けて記載しています。
  看護師の方は、周知の内容ですのでご了承ください。

1.看護師の2つの仕事

 看護師の仕事は、「診療の補助」と「療養上の世話」と言われます。

 診療の補助とは、患者さんがきちんと治療ができるように、医学的な知識を使いつつ、看護の視点を持って、患者さんの訴えに耳を傾け、症状を観察します。治療が円滑に進むように物理的、人的環境を整えたり、退院後の生活で困らないように生活習慣に関する指導をしたりします。

 療養上の世話とは、自分で食事や排泄(トイレ)、体をきれいにするなど、健康だったら自分でできるけれど、様々な事情で自分で十分にできない方のお手伝いをすることです。

 TVドラマなどの影響もあって、イメージがつきやすいと思います。

2.1では語りきれない仕事

 ⅰ.ナースコール対応

 療養上の世話の一部になりますが、ナースコールは、患者さんの命綱とも言えるので、その都度対応しないといけません。
 しかし、具合が悪くて押す方もいれば、雑用のために押す方もいて、ナースコールを押す理由はさまざまです。

 また、トイレ介助が必要な方は、当たり前ですが、トイレに行きたいタイミングで押します。予測して声をかけたりしますが、タイミングが合わないことも多々あり、これは生理現象なので仕方がない部分かなと思います。
 また、ついさっきトイレへ行ったことを忘れてしまう方もいますので、その都度、対応が必要があります。

 1〜2フロアを1病棟としている施設が多いと思います。ですから、フロア全体を行ったり来たりひっきりなしです。コールがあっちこっちであるとひたすら動き回ることになります。

 ナースコールの多さは、日によって物凄く差があります。次から次へと鳴り止まない日もあれば、ほとんど鳴らない日もあったり。平均してくれればいいのに…と思いますが、人が相手だとそうはいきませんね。

 ⅱ.突発的な患者さんの異変

転倒
 高齢の患者さんは転びやすいですし、比較的若くても、普段はない管類などが体についているので、ひっかけて転んでしまうこともあります。
 そんな時はすぐに駆けつけて、患者さんの状態を確認し、医師に連絡したり、必要なら検査などの手配をします。

 たかが転んだだけでしょ?と思うかもしれませんが、転んだことが原因で、骨折したり、打ち所が悪くて深刻な状態になる可能性もあります。
 ですから、私たち看護師は、転ばないように必死になって策を練ります。

急変
 急激に状態が悪化したことを「急変」と言っています。命に関わることが多いので、その勤務帯の看護師全員が、役割分担をしつつ、看護師だけでなく、医師とも協力しながら対応します。

 ⅲ.記録物

 カルテというと、医師が病状や治療に関することを記載する物と思われがちですが、看護師用の記録もあります。裁判などで証拠として扱われますので、書くべきことをしっかり書く必要があります。
 日々の患者さんの状態を記載したり、どう看護していくかと言う計画を立案したり、評価したり。退院が近づくと、退院後に関わる施設やスタッフ宛に、病院での様子を書いた手紙を用意したりする必要があります。
 国から記載するように指示されている書類も多く、かなりの時間を記録に要します。

 ⅳ.他部署とのやり取り

 看護師は、いろんな部署との調整役でもあります。患者さんそれぞれに合ったケアができるよう、各分野の専門の方たちに提案したり、確認したりしますし、話し合いの機会をセッティングしたりします。 

3.病棟看護師の役割

 病棟では、体の状態を教えてくれるモニターなどの医療機器を使っている人は多くありません。ですから、目に見えること、患者さんに触れた時の感覚、発する匂い、聞こえる音など。全感覚をフル活用して観察し、何が起こっているか考えなければいけません。

 時には、急変や転倒のリスクが低いとされていた患者さんが、意識をなくして夜の廊下で倒れていたり、退院間近の方が、談話室で意識消失したりすることもあります。

 治療は、もちろん医師の指示のもと行いますが、常に医師が病棟にいるわけではありません。
 病棟看護師は、患者さんと接する機会が他の職種に比べて多いので、「昨日より調子良さそう」「今日はしんどそうだな」「なんかいつもと違う気がする」といった気づきが、異常の早期発見につながりますので、その兆候がないか、患者さんを観察しています。
 患者さんの訴えや、目の前で起きている症状を観察し、体の中で何が起こっているか考え、そのまま様子をみるのか、医師に報告するのか、事前に指示された薬を使って様子をみるのか、など考え、判断しながら働いています。

まとめ

 病棟の看護師は、治療がスムーズに進み、退院後、生活が滞りなく移行できるように環境を整えつつ、患者さんに必要な日常生活の手伝いをします。
 病棟では、患者さんは体の状態がわかる医療機器をつけていることが少ないので、全ての感覚をフル活動させて、何が起こっているのか観察し、それが体がどのような状態を示しているのかを考え、どう対処するか判断をしています。

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