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#53 気をつけよう、看護師の内輪話

 仕事の愚痴や先輩の悪口だけではなく、職場であった面白おかしい話や、たまにいる愛すべきキャラクターである患者さんやスタッフの話など、世間話と同じように、所構わず話してはいませんか?
 例え同じ職場でなくても、同業者や同じ医療福祉系の友人とは、現場でのそういったエピソードは共感できることが多いため、共通の話題として盛り上がりやすいですよね。

 でもこれ、医療福祉系以外の人が聞いたら、引いてしまうような内容もかなり多いんです。

 生死や老い、下ネタ(エッチなことではなくて、排泄などのこと)など、私たちには身近な話題は、一般の方々には非日常で特殊だったり、非常識であることが多いです。食事を食べながら、排泄物などの話は本来非常識ですし、万人受けする話題ではありません。
 そういった話をしているグループの一員だと気づきにくいのですが、盛り上がっている自分たちの周囲を見渡すと、ギョッとした顔をしている方々と目が合うでしょう。
 看護師が笑い話にしがちな患者さんとのやりとりなどは、どんなに愛情を持った上での発言であっとしても、業界外の人からしたら、看護師の人間性や倫理観を疑うような内容の可能性もあります。

 以前、10名弱の女子会をしていたとき、ひとり以外はみんな看護師もしくは看護師経験者でした。そうなると、話題は自然と現場での出来事になります。はじめは、部外者の友人に気を使い、状況などを説明していたのですが、盛り上がってくると、つい自分たちの話したいことを話していました。
 ひとりが、認知症患者さんと看護師とのやりとりを話始めました。認知症患者さんあるある的な話でしたし、内容自体は、現場で日常茶飯事に体験する内容でした。聞いていた私たちは同調し、各々似た体験を語りました。
 私たちが盛り上がる中、業界が違う友人は、「みんなは、そんな人たちだったの?」と言う表情で衝撃を受けていました。彼女にとっては、献身的に働いていると思っていた看護師の友人たちが、思いがけない対応していたこと、そしてそれをネタに笑っていたことが、信じられないようでした。

 このときの話題自体は、本当に、日常に溢れているありふれたやりとりでした。語る側は、患者さんを馬鹿にしているわけでもなく、むしろ「愛すべき患者さんとの面白いエピソード」として語っていますし、聞く看護師側もその意図を瞬時に理解し共感していました。

 私たち看護師は、疾患に対する知識をもち、日々の経験を持っていますし、その時々の患者さんの病状的・精神的状態に合わせて対応を変える必要がある仕事です。
 時には親身に関わるより、ある程度の距離をおいて見守ったほうがいいこともあります。距離をおいた場合でも、同然放置はしません。きちんと経過を観察しますし、タイミングを見て、そのとき適切な方法で関わる、ということを自然にしています。

 しかし、一般の方は、どんな時にどんな症状が出て、どう対応するのかを知りません。ですから、「距離を置く」ということが、治療や看護のアプローチのひとつとして理解しにくく、「見放した」という印象を持ってしまいます。また、看護師も、多少の脚色をして笑い話にしていることも、印象を悪くする原因のひとつになってしまっています。

 また、患者さんと看護師との関係は、他の職種や業界での人間関係とは少し異なります。患者さんと看護師という関係には、介助をする人、処置をする人という役割だけでなく、時には、友人・子供・孫・親のような立場からアプローチをし、関係を築いたり、患者さんの精神的なフォローをしたりします。
 このような関わりをするのは、直接対象者の日常生活に介入する業務を担っている看護師、福祉士やヘルパーなどのケアスタッフだけだと思います。

 同じ医療業界といえど、医師は医者としての確固たる立場がありますし、リハビリや検査部門のスタッフは、その分野の専門職という認識を一般的に持たれています。また、医療福祉業界以外では、個々の立場が確立しており、関係性が明確です。
 そのように考えると、私たち看護師と患者さんとの関係性は、同じ感覚で働く職種が少なすぎて理解してもらうことは不可能に近いでしょう。そのため、看護師だけの視点で語ってしまうと、外部の方の医療者への不信感を抱かせてしまうことになります。

 私たち看護師が、ある種独特の愛情を持って語る内容が、他の人に正確に伝わることは残念ながらありません。ですから、一緒にいるメンバーだけでなく、周囲にも看護師以外の方がいる時には、自分たちの話している内容がその場にふさわしいかどうかを客観的に見ていく事が必要です。

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