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こころの持ちかたで、出来ることがある

私の勤める療養病院では、月に数人、施設や自宅に退院する患者さんがいます。退院した患者さんが、どのように生活をしているのか、退院して2~3週間くらいを目安に訪問して様子を確認しています。

先日退院した患者のHさん。80代の男性。要介護3。
入院中は、排泄はほぼ失禁だったのに、施設では自分でトイレに行って排泄し失禁はほぼないと言うのです。びっくり・・・なにがあったのでしょうか。



患者Hさん

Hさんは、もともと自宅で奥さんと2人暮らし。奥さんは認知症があり、Hさんが介護をしていました。

ただ、Hさんも高齢になり、最近車の免許も返納していました。車で30分くらいのところに住む娘さんが時々訪問して、生活の支援を行っていました。

そんな時に、Hさんは家の外で転んで動けなくなり、1日同じ姿勢で過ごし、翌日訪問した娘さんに発見され、救急搬送、近くの総合病院に入院となったのです。

認知症の奥さんは、ご主人であるHさんの異変には気付かなかったそうです。そして、奥さんは一人暮らしは出来ないので、施設に入所されました。

Hさんは、総合病院で治療、リハビリを行い、自宅退院を目指していたのですが、入院中にまた転倒してしまい、施設入所をする方針となりました。

私の勤める療養病院に転院してきたのは、施設が決まるまでの間の入院という目的でした。

Hさんの入院中の様子と退院後

Hさんは耳が遠いのですが、認知症はなく聞こえればしっかり会話が出来る方です。ただ、足腰は弱っているので、少しの介助あるいは見守り程度で歩行器歩行が出来る状態でした。

入院中はリハビリを行い、歩く練習をしていたのですが、起き上がって、座って、歩行器を使って歩く動作に時間がかかります。トイレは部屋にはないので、少し離れたところに職員付き添いで行っていました。

ただ、排泄は間に合わないというので、紙パンツ内で失禁していることが多かったし、本人もそれを望んでいました。

施設は、いわゆるサービス付き高齢者住宅で、部屋は個室、居室内にトイレがあります。ただ、施設での生活が始まっても、基本はオムツ内排泄になるかしら?と考えていました。

それが、です。
施設での生活が始まると、部屋にあるトイレで、自身で排泄し、ほぼ失禁のない毎日を送っていたのです。

なぜ?
聴いてみると、娘さんが、「オムツの交換なんて、誰もできないからね!」「ちゃんとトイレでして!」と、本人にかなり諭したそうです(笑)。

それが効いてか、自分で頑張ってトイレ排泄ができるようになったのです。ある程度出来る能力はあったのですが、入院中は甘えもあったのかもしれません。

出来るという気持ちを持つこと

Hさんを変えたのは、娘さんの一言があったのが大きかったのでしょう。

もちろんお部屋がにトイレがあることで、トイレを使いやすくなったことも要因としてあるとは思います、転倒して時間がたって、体力がついてきたこともあるかもしれません。

私が想像するに、Hさんは「娘に怒られたから、ちゃんとトイレでできるように頑張ろう」って思ったんじゃないかって思うのです。

つまり気持ちの部分で、「出来るようになりたい」とか「自分でやらなきゃ」って思ったんじゃないかと思ったんだと思うのです。

人って、自分が出来ると思うと出来るものなんだなぁって再認識しました。逆に言うと、出来ないと思うと諦めてしまう面があるのかもしれないですね。

人って気持ちの持ち方しだいで変わるもの。

出来るを前提にものごとをとらえれば、出来ない理由を探すのではなくて、出来るにはどうしたらいいかということを考えます。

私も、出来るを前提にものごとを考えられる人でありたいと、Hさんのことをきいて、再認識できました。


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