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社会調査の基礎 社会調査における倫理と個人情報について、調査者が気をつけるべき点を述べなさい

 社会福祉士による社会調査においては、社会福祉士の倫理綱領や行動規範を考慮し、対象者・協力者に不利益が生じないようにすることが求められる。社会調査においては、調査をする側とされる側との関係性が非対称になることが指摘されてきた。また、障害学においては、研究者や援助専門職による調査は、障害者のためよりも、彼らの専門職としてのキャリアにしばしば資することが批判されてきた(Oliver、1997)。このような批判に対して、社会福祉士は謙虚であるべきだろう。

 具体的に必要なことは、プライバシーの尊重、秘密の保持、記録の開示、情報の共有(管理)などである。行動規範には「社会福祉士は、業務の遂行にあたり、必要以上の情報収集をしてはならない」とあるように、社会調査においても、調査目的に不要な情報を集めることは控えるべきである。

 調査を論文等で公表する場合、対象者・協力者の氏名、住所、利用している福祉関連機関の名前、援助者の氏名、生年月日といった情報は、可能な限り、個人が特定されないような形にする必要がある。イニシャルを用いる場合、そのイニシャルの割付けは、個人名を反映させず、無作為なものでなければならない。年齢については、特に必要な場合を除いて、何歳代(前半、半ば、後半)などとすることもある。学術雑誌の投稿規定においては、対象者・協力者の指標を一人ずつ具体的に書くのではなく、代表値もって示すことが求められることがある。例えば、10名の中途障害者の研究の場合、年齢、受障からの年数などの平均値、最大値、最小値などで表わすのである。
なお、共同研究者との検討をする際にも、対象者の意向次第では、個人情報をできるだけ伏せたうえで、検討資料を作成することも必要である。また、検討会中に見聞きしたことを他言してはならいないことも確認する必要がある。
 
(引用・参考文献)
(1)新・社会福祉士養成講座 社会調査の基礎

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