7期生「セカンド・シフト」と「就労継続型」についてディスカッション(2024/05/08)



はじめに

2024年5月8日、高橋美恵子『ワーク・ファミリー・バランス』の第一章、p23~54より、今回は「セカンド・シフト」「就労継続型」について、3年ゼミ生が議論を行いました。

セカンド・シフトとは

セカンド・シフトとは・・・社会学者のアリー・ホックシールドらが1989年に出版した本のタイトルである。直訳すると「第2の仕事」→共働き世帯の女性にとって家事や育児などの家庭内労働                は、日中の仕事に続く「第2の仕事」である。

日本のセカンド・シフトの状況


・日本は男女共に有償・無償を合計した労働時間が長くなっている。
→日本人の自由時間が少ない。

・日本は有償・無償を合計した労働時間の男女差が並んで大きくなっている。(女性が多い)
⇔ノルウェー、オランダ、デンマークなどは男性の労働時間が女性を上回っている。

・日本の女性の睡眠時間は8時間を切っており、OECD諸国の中で最短である。
→セカンド・シフトによって女性の自由時間が圧縮され、睡眠時間も削られている様子がうかがわれる。

仕事と家事に追われ、満足に眠ることもできない社会で、果たして女性が子供を持ちたいと思うか?

無償労働の価値とは


・無償労働は非常に重要で負担が大きいが、金銭収入を得ていないがために統計上非経済的活動人口に分類されてしまう。

・日本の「労働力調査」(総務省)でも、「仕事とは収入を伴う仕事(自家営業の手伝いや内職を含む)」であると定義されており、無償労働のみをしている人は労働力人口に含まれない。

・内閣府が公表した試算によると無償労働の貨幣価値は138.5兆円で、名目GDPの約3割に相当する規模と推測されている。そのうち80%が女性の寄与で、20%が男性の寄与である。
※男性の時間当たり賃金が女性より高いために、貨幣評価すると男性の寄与が実際の無償労働時間のシェア以上に大きくなるため、実際に男性が無償労働の20%を働いているわけではない。

結局のところ労働市場の男女賃金格差が無償労働の貨幣価値を大きく左右している。

問題提起


労働時間が極端に長いという日本の現状をどう見るべきか
→日本の労働時間は減らしていけるのか

参考文献


セカンド・シフトを超えて 家庭内労働をめぐる諸側面
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/20114605.pdf
参照 令和6年 5月5日


就労継続型


就労継続型と就労中断型の違いとは

日本の共働き家族に存在する2つのタイプ(全ての女性がどちらかに分類できるわけではない)
①就労継続型…妻が正規で働き続ける
②就労中断型…出産・子育てを機に仕事を辞め、後に非正規として再就職する

第15回出生動向基本調査(最新)

女性が理想とするライフコース
・「就労継続型(結婚し、子供も持つが、仕事を続ける):32.3%→34.0%
・「就労中断型(結婚し子供を持つが、結婚あるいは出産を機に退職し、子育て後に再び仕事を持つ):34.6%→26.1%
・「専業主婦コース(結婚あるいは出産の機会に退職し、その後仕事を持たない)」:18.2%→13.8%

・「DINKsコース(結婚するが子供を持たず仕事を続ける)」:4.1%→7.7%
・「非婚就業コース(結婚せず仕事を続ける)」:5.8%→12.2%

★就労継続型を求める女性は増加している一方で、子供を持たない選択肢を持つ人が増加

〈就労継続型での問題点〉


①育休制度のとりづらさ

②「男性稼ぎ主モデル」の働き方が依然として求められている
→家事・育児を委ねられるパートナーいてこそ可能になるもので、このままの働き方では就労と家庭両立難しい

〈改善のために〉


①・厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」における男性育休取得率は46.2%
→令和4年度の17.13%に比べ大幅に増加(まだ公開していない企業もあるから全てではない)
・男性の育休取得日数平均は46.5日
→「社内の男性育休取得率の増加」「男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化」などが変化の理由として挙げられ、改善されてきていることが読み取れる。

②子供のいる世帯では、女性は家事・育児時間を減らしたいと思う傾向が強く、男性は仕事時間を減らし、家事・育児時間を増やしたいと思う傾向にある。

・週間就業時間60時間以上の雇用者の状況
男性は7.7%、女性は2.0%であり、特に男性は2013年の14%からかなり減少はしているが、2020年からは男女ともに横ばいとなっている

・一般労働者(正規雇用)の月間総実労働時間
2022年
所定内労働時間 148.4時間
所定外労働時間 13.8時間
→コロナの影響もあるが、2020年からは増加傾向にあり、あまり改善はみられていない

参考文献


①令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査
001128241.pdf (mhlw.go.jp)

②第15回出生動向基本調査(最新)
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_ReportALL.pdf

③令和5年版 男女共同参画白書
00 令和5年版白書(概要).pdf (gender.go.jp)

④令和5年度版 労働経済の分析
23-1.pdf (mhlw.go.jp)


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