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本を探す図書館から、本と出合える図書館へ


玄関正面、北川民治の陶壁画前に立つ館長の吉村きみさん。愛読書は灰谷健次郎。趣味は休日の図書館巡り。

瀬戸市を見下ろす小高い丘に建つ瀬戸市立図書館は、1970年竣工の歴史ある建物で、地元ゆかりの芸術家、北川民治の陶壁画で市民に親しまれています。2022年3月、図書館の顔である玄関エリアの企画展示棚が、本の表紙が見えるゆったりとした棚へと、大きく立体的に生まれ変わりました。図書館長の吉村きみさんは司書の資格を持ち、「趣味は図書館」とおっしゃる大の本好き。吉村さんに変更の目的を伺いました。
 
「従来の図書館は、来館者がこの本を読もうと思い借りに来られる、『探す図書館』でした。きっちりと並び、背中しか見えない陳列から、本の顔が見える陳列に変えることで、『本と出合える図書館』にできたらと思ってこの棚を選びました」2022年3月のテーマは「春がくる♪」。桜の造花や折り紙で楽し気に飾られた棚を、多くの方が立ち止まって眺めていました。
 

本の顔が見える棚は大好評で、玄関展示本の貸出数がグンと増えたそう。


棚はエリアごとに分類され、本が「手に取って!」と言わんばかりに、見やすく並べられています。春にちなんだ子ども向けの絵本、花や自然、食や旅の本、春を題材にした読み物から、「プラハの春」といった平和や命を考える本まで、幅広い目線で選ばれた本たち。「春ってワクワクするし嬉しいけど、不安になることもありますよね。そんな春のいろんなストーリー=文脈のある本棚にしたいと思っています」
 
「図書館に地域の方がいらして本に出合い、生活の中にある課題を解決したり、人との交流や知識を深め、生きがいにつなげることができる。そんな図書館をめざしています。瀬戸市立図書館の特徴は、全国的にも珍しく、小中学校の図書館を使った7つの地域図書館があることです。駅に隣接し、21:30まで使える情報ライブラリーもあります。人口の割に手狭な本館の機能を、施設の特徴に合わせて分担し、もっと多くの方に図書館を使ってほしいです」

本館だけで、平日は400名、土日は700名の方が来館するそう。資料を拝見すると、図書館職員のお仕事は21種もあり、カウンター業務以外は吉村さんを含め6名の方(2022年3月現在)で担っていると聞いて驚きました。これからは職員だけではなく、市民の皆さんと一緒に棚を作りたい、図書館作りに参加して欲しいとおっしゃる館長さん。次はどんな本との出合いを演出してくださるか、とても楽しみです!  (しょうじ@STEP)

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