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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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2024年5月の記事一覧

いざ、壮大な歴史の先へ ~不破 有紀『はじめてのゾンビ生活』を読んで~

 最近、ある人と喋っていた時に出てきた「SNSやショート動画の影響で長いコンテンツに対する集中力が無くなってきている」という話題が深々と胸に刺さった。私も最近は種類によっては10分ほどの動画を倍速にしたり、SNSを横目にテレビ番組を見てたり。ぶっちゃけテレビ付けてる意味なくない? と思わなくもないのでこの癖はできる限り辞めるようにしないとと常々思っております。  それでも読書は、たとえ長編でもまだ集中して読めている方なのかなとふと考えた。読書はどうしても"ながら"ができない

愛する心は壁を越えて ~柳之助『バケモノのきみに告ぐ、』を読んで~

 最近の作品のタイトルには最後に句点「。」が付いていることが多い。普段からSNSでの読了報告や今のような本紹介といったものを書いている身からするとミスをなくすためにもかなり神経を張って確認している。そういうことを思うと『バケモノのきみに告ぐ、』のように最後が読点「、」で終わっていることはかなり珍しく感じる。中途半端のような印象も持つがその直前の「告ぐ」という動詞や追想録という特徴を踏まえるとこれから証言をするといった解釈にも取れてしまう。そういう意味では「。」よりも「、」の方

気が付けますか? 些細な違和感 ~雨穴『変な家』(文庫版)を読んで~

 『変な家』という本が人気らしい、という噂はかなり前から知っていた。だが、読もうとしたのはつい最近の事だった。理由は2つ。丁度文庫版が出版されたことと、知り合いに強く勧められたからだった。いつもの知り合いにしては強く勧めてくるのが珍しく既に組んでいた本を読む順番を崩しての読書だった。  確かに勧める人も出てくるのも納得の面白さだった。それは物語としての筋立ての面白さは勿論、恐らくフィクションであるにも関わらず現実にあったかもしれないというリアリティーを突き詰めた表現が読みや

本を作ってみようin江戸時代 ~ゆうき りん『大江戸恋情本繁昌記』を読んで~

 いつもの事なんだけど、やっぱり本屋さんは謎の魔力持ってると思うんだ。棚をじっくり見ていくと気になる本がいくつもいくつも出てくるし、レジに行く頃にはほぼ必ずと言っていいほど予定に無い本を数冊持ってる。最近は個人の事情もあってかなりセーブされているがそれでもやってしまうのが世の常。  最近読んだ『大江戸恋情本繁昌記』もその1冊だった。奇抜にして収まりが良いカラーリングの表紙に目を吸われるし、現代人の編集者が江戸時代で本を作るってのも面白そうだと思いまして、つい。作家がメインの