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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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2023年8月の記事一覧

この初恋は、唯一無二 ~榛名 丼『レプリカだって、恋をする。』を読んで~

 今までライトノベルを中心に様々な本の話を投稿してきた私だが、ここに来てある重大なことに気が付いてしまった。ライトノベルの花形でもある恋愛ものを全く取り上げていないということに! いや、恋愛要素というものはどのライトノベルにおいても必ずと言っていいほどの必須項目ではあるののでそうは感じてない方もいるのかもしれない。だが、私の個人的な好みのせいで恋愛よりもバトルに重きを置いた本を手に取りがちになってしまっていた。これはラノベ好きとして、またラノベを紹介する活動を行うものとして十

神話と日常はいつもあなたの傍に ~暁 佳奈『春夏秋冬代行者』を読んで~

 みなさん、今年の夏はいかがお過ごしだろうか。私は夏の暑さに屈して毎日午前中からエアコンを入れて過ごす日々だ。それにしてもここ数年で季節の間隔がガラリと変わったような気がする。特に夏から冬への間隔が一段と短くなって秋を感じる暇がない。季節とはなんとも気まぐれなものだ。  そんな日々を過ごす中でふと頭に浮かんだある文章があった。  この作品が世に出た時期は2021年の春とそう遠くはない。(え、もう2年前の話なのか……)読んでた当時はそこまで実感はなかったが、今年になってこの

彷徨う兵士の行く末は…… ~安里 アサト『86—エイティシックス―』を読んで~

 小説を購入するまでの経緯に関しては様々だが、その中でも私が1番思い出に残っているのは『86—エイティシックス―』だろうか。初めてアニメ放映中に原作を購入したというのもあるのだろう。タイトルそのものは受賞時のときから知っていて元々興味はあったのだが、当時は使える金銭が少なかったため、完全に後回しの状態となっていた。因みに購入のきっかけとなった最大の要因は、登場人物の顔と名前が一致しなくて視聴時に混乱していたからというあまり自慢できないものなのだが。とまぁ、そんな理由で購入した

未知なるジャンルをご照覧あれ! ~古河 絶水『かくて謀反の冬は去り』を読んで~

 いきなりだがライトノベルのジャンルといえば、皆さんは何を思い浮かべるのだろうか。王道のファンタジーや異世界もの? それともラブコメ? ライトノベルと一口に言ってもそのジャンルは様々だ。だが実際は、ジャンルの偏りがあることは否定できない。だからこそ、稀に表れる突飛な発想の世界観を押し出した新作に興味を持ってしまうのかもしれない。特に新人賞受賞作は独自の発想と1冊にまとめ上げられる構成力で評価が決まることから、密度の濃さが特徴的な作品が多い。そんな新人賞受賞作特有の独自性も一筋