没物語供養

墓参りの仕方

脚本にして自主制作映画にしようかなと思っていたけど製作費とか様々な理由で世に送り出せなかった物語をここに供養します。メモ書き程度なので脚本としての体裁や内容は保証できません。

没になった物語の供養~安らかに眠れ~

貸した本返せ

「ここにもない。ないなー」
シーンは主人公Aが部屋でなにかを探してるところから始まる。見つからず途方に暮れる
そのとき、友人らしき人物(顔は見えない)に探し物の本を貸したことを思い出す。
「あいつかぁ」
そう言いながら、Aは電話をかけてみるが繋がらない。
仕方なく彼の家に行くことに。
彼のアパートの前に着くと、Aはインターホンを押した。
しかし出て来ない
「おーい、いるだろー開けろー」
扉を叩いて叫ぶA
扉が開く。中からパジャマ姿の眠そうなBが出て来る。
B「なんですかこんな時間に?」
Bは目をこすりながら言う。
A「なんですかじゃないだろ。流石に本返せよ。」
B「本?」
A「一年も返さないのは流石におかしいだろ。」
B「何のことだか?」
A「覚えてないならもういい。自分で探すから。」
部屋に半分押し入る形で入るA
B「ちょ、ちょっと…」
Aは机の上にある一冊の本を手に取る
A「そうそうこれこれ。ずっと探してたやつ」
B「えっ、はっ?」
A「これ返してもらうわ。」
B「それ自分の本だけど…」
A「そんな証拠ある?」
B「裏表紙に名前書いてあるんで」
A「はぁっ?何やってんの?俺の本なのに。」
B「だからそれ自分のだって…」
A「お前やばいな…。とりあえず返してもらうわ。」
そう言ってAは本を持ってそそくさと去っていった。
携帯を取り出すB
B「あっ、警察ですか?今全然知らない人が突然家に押し入ってきて本盗られたんですけど。」
Bは時計に目をやる。
B「いつ?今さっきです。時間は、午前5:20頃です。寝起きで全然抵抗できなくて…はい…常習犯って…はい…よろしくお願いします。」
最後は自室で奪った本を読むAのシーンで終わる。

宇宙人ダンス

「みんなみて――――」一人の少年、タカアキが休み時間の教室で黒板の前に立つ。少年は伝統舞踊でもフラメンコでもない独特のリズミカルな踊りを始める。あっという間に教室は笑いに包まれ、彼は一躍人気者に。しかし、そんな彼は今や地下の小劇場にまばらに入ったたった10人の客を笑わせるのにも精いっぱい。次の芸人が起こす笑いを尻目に彼は劇場を後にする。テレビに映る人気お笑い芸人を鼻で笑いながら一人バイト先の控室でコンビニ弁当をかきこむ。「お前は宇宙一面白い男になる」幼いころ父から聞いた言葉を口元で小さく反復してみる。タカアキは母に今度父の墓参りをしようとメールを送る。そのとき、電話がかかってくる。劇場のオーナーから次回のチケット数が30枚を下回れば劇場を貸すことができないと言われる。タカアキは抵抗するが、あえなく電話は切れる。飲みに行った友人トモヤにも芸の「オリジナリティのなさ」を指摘される。
そんなとき、彼は小学生の頃のあの不思議な踊りを思い出す。小学生の踊りならほかの要素にとらわれないのではと考え彼は前向きになり始める。そうして地道にユーチューブなどを通してその踊りを拡散していく。
公演当日、練習の跡が見えるぼろぼろのノートを脇に劇場に到着。意気揚々で舞台に上ると、劇場を埋め尽くす満席!かと思いきやたったの3人。タカアキは普段のビラ配りや宣伝を疎かにしていたためだ。
バイト先の控室で落ち込んだ顔のタカアキがいつも通りテレビを見ていると、速報が入る。次の瞬間、巨大ウミウシのような生物が空から降ってきては粘液で待ちゆく人を捕らえて宇宙船らしき乗り物に張り付けてゆく。悲鳴。車の警報音。大パニックだ。今度は緊急閣僚会議が執り行われる様子。総理大臣は「未確認生物による人間その他動植物の拉致が世界規模で行われている。真相はいまだ不明だが頑丈な建物に避難するように。」とカメラのフラッシュの中困惑の表情で述べた。タカアキはスマホを急いで開く。SNSでは巨大ウミウシの話題で持ちきりだ。しょうもないネットのコラ画像があふれる中、一つのアカウントが「捕縛対象が無作為的であり、比較的その数も少数であることからウミウシの目的は『侵略』ではなく地球の『研究』である」と仮説を立てている。
ふと、トモヤの安否が心配になる。走って彼のいるアパートにたどり着くとトモヤが不平を言いながら迎え入れてくれる。しかしトモヤがドアを閉めようとした瞬間ウミウシが現れる。粘膜はトモヤとタカアキに発射され、頭を打ったタカアキは気を失う。
気が付くと二人は白い繭の中のような空間にいた。二人は一体どうなるのだろう。
一方別の繭ではあるウミウシが持ってきた地球のPCに触手が接続される。地球のインターネットが繭の壁に表示される。彼らは地球の情報をスキャンするようだ。その途中である動画にウミウシが釘付けになる。タカアキの踊りの動画だ。笑いという文化のない彼らはそのかわり体色が目まぐるしく変化する。
タカアキとトモヤは繭に開いた大きな穴から広い石の部屋に投げ込まれる。どこかの古代遺跡のようだ。そしてほかのウミウシより一回り大きなウミウシが降りてくる。二人は後ずさりする。部屋の隅まで追い詰められたタカアキは壁画があることに気づく。どこかでこの絵を見たことがある。壁画の人のポーズはタカアキの踊りにそっくりだ。その瞬間タカアキの記憶がフラッシュバックする。
「タカアキ、父さんがとっておきのダンスを教えてやろう。」
タカアキはこのダンスが自分の「オリジナル」でなく父から習ったものだと気づく。「俺の父さん、考古学者だったんだ。」「は?今言うことじゃないだろ?」「こいつらは俺に踊れって言ってんだよ。」「なんでだよ」「きっと儀式かなんかだよ。とにかくやってみるしかない。」
タカアキは腰を上げる。次の瞬間、あの構えをする。不規則に見えながらリズミカルなそのダンスはまるでウミウシたちを誘惑しているようだ。その途端集まったウミウシが色とりどりに光りだす。二人とウミウシたちを乗せた石の床がせり上がり、天井が開く。タカアキは踊り続ける。
宇宙にまで届いてもタカアキは踊りを続ける。それを取り囲むようにウミウシの母艦も集まりだし色とりどりに光りだす。「お前も踊れ!!!」トモヤも踊りだす。光はふたりを取り囲み鮮やかに照らし出しましたとさ。

鉛筆

あるホテルのロビー。黒スーツの男は老人に筆箱くらいのケースを手渡す。その中には「タツキ」と書かれたぼろぼろの鉛筆が一本丁寧に収められていた。「タツキ様の物です。先日偶然見つかりました。」と黒スーツ。「もう二度と見ることはないと思っていた。」と老人は涙を目に浮かべる。
タツキとアキラは中学校一年で同じクラスになる。タツキは休み時間も一人でノートに何か書いている。皆はシャーペンや無地の鉛筆を使っている中、彼だけは「コスモマン」の鉛筆を使っている。ノートに筆を走らせているタツキの目は誰よりも輝いていて、アキラはそんな彼に興味をもって話しかけてみる。それ以来二人は宇宙に夢中になり、アキラはタツキから二本ある鉛筆のうち一本を譲り受ける。
アキラとタツキは同じ高校に進学し天文学同好会を設立。ある日二人は望遠鏡で流星群を覗きながら「コスモマン鉛筆を宇宙まで持っていく」ことを夢に決める。
大学入試本番、二人はゲン担ぎにコスモマン鉛筆を持参する。緊張するタツキをアキラは励ます。しかし、タツキの鉛筆は試験監督に没収されてしまう。タツキの緊張は最大に達し、順調に解けていた解答用紙の上の手が止まる。あっという間に試験が終わり、受験を終えたアキラからの連絡にタツキは返事をしないまま一か月が経った。合格発表の日、二人の受験番号は合格者の欄に無事収まっていた。
工学部に進学した二人はもちろん宇宙工学を専攻する。しかし、アキラは大学での人間関係にのめりこみ学業を疎かにする。孤立するタツキ。そんな中、ふと見かけたコスモマンのアニメの再放送でアキラは初心を取り戻す。
二人はすっかり大人に。タツキは宇宙飛行士、アキラは管制官。ロケットのフォルムはどこか鉛筆を思わせる。ロケットは無事発射。成層を突破。宇宙空間に到達。管制室が湧く。二人はそれぞれ鉛筆を感慨深く眺める。
初の船外活動、タツキは手早く作業を終わらせると地球をバックに鉛筆をカメラにかざす。写真を撮ろうとした瞬間宇宙ステーションが隕石で軌道を外れる。送気管が切れてタツキは吹き飛ぶ。かろうじて無線は通じているためタツキの生存を確認、空気は残り20分。アキラはレストランで食事中この一報を受ける。宇宙ステーションに向かう途中、近くにパソコンもない状態でアキラは勘とスマホだけをたよりにナプキンに鉛筆で解決策を模索。運転手にスピードを上げるよう怒鳴るアキラ。次の瞬間アキラの乗った車は事故を起こす。アキラは頭から血を流しながら計算を進め、ロシアの宇宙ステーションがタツキの近くを通ることを知る。急遽ロシアに救助要請を行い、どうにか空気が底をつく前にタツキを救助できると確信。
ロシアの宇宙ステーションが近づき、チューブにつながれた宇宙飛行士がタツキに手を伸ばす。だが、あと二メートルで手が届かない。
場面は最初のホテルのロビーへ。黒スーツは「それではタツキ様は…」と言いとどまる。それを聞いてアキラは遠くを見るような目をする。
宇宙空間。タツキはとっさに鉛筆を自分の背中に突き立てて空気が噴出する推進力で手を取る。タツキは九死に一生を得る。
 コスモマン鉛筆は風圧に負け宇宙空間へと吸い込まれてゆく。タツキはそれを宇宙ステーションから穏やかに眺める。鉛筆のコスモマンが太陽に照らされて光る。
 ロビーの向こう。老人の視線の先から人影が見える。おわり

ある太った男

ある太った男性(主人公)が目覚めると、うっそうと茂った森の中であった。目の前には横たわっていた自分を看病してくれている女性Aと、あたりを警戒しているたくましい男性B。
主人公が目覚めたことに気付くと、Bは場所を変えようと言って走り出す。続くA。主人公は混乱しつつ後に続く。
後ろから武装した謎の兵士が追いかけてくるが、なんとかまく。落ち着いたところで、AとBから話しかけられるが、AとBが誰かも、自分が何者かも覚えていない。主人公は自身の頭に包帯が巻かれていることに気付き、AとBに自分に何があったか尋ねる。
三人は会社の同僚で、登山をしている途中だった。その時突然、北の空から緑色の閃光が降り注いだ。しばらくして、謎の兵士が追いかけてくるようになった。警察に電話するも、同様のケースで手一杯。約50km先の人里に避難所を南に開設したのでそちらに自力で来てほしいとのことだった。主人公はA、Bとともに謎の兵士らから逃れ、南を目指す最中で崖から滑落し頭を強打してしまったのだ。
避難所まであと約30km。食糧は主人公の滑落によってほとんどを失い、絶望的な状況であった。しかし、AとBは主人公に優しく、Aは主人公にとってタイプの女性であった。移動中の合間を縫って、記憶を失ったままの主人公は、会社の剣道部に所属していたBから剣道の心得を学んだ。時には協力して焚火の燃料となる大量の薪を運び、少ない食糧で何とか食いつないでいった。
ある夜、焚火を焚いていた。主人公が兵士に知られないか聞くとBは「夜はなぜか襲ってこない」と答えた。焚火の前でAに社交ダンスを習う主人公。久々の娯楽であっという間に時間が過ぎていった。楽しい時間は終わり、地面に寝そべって寝ていると、AとBの会話が聞こえてきて、目が覚める。「すべては計画通りね。」「ああ。」不穏な雰囲気が漂う。
ある日、避難所へ向かう途中で、主人公たちは兵士たちに見つかってしまう。全力で走る主人公たち、しかし兵士たちの体力は一向に減る気配がない。
途中でAが躓いてこけてしまう。主人公は助けに戻ろうとするが、「先に行って!!!」とA。迫る追手。BはAをあきらめて走り出し、主人公はためらいつつ走り出す。しかし、主人公は後悔し始める。本当にAを見捨ててよかったのか…。そんなとき、Aのものと思しき叫び声が聞こえる。追手に捕まったのかもしれない、そう思った主人公は来た道を戻る決意をする。しばらくすると、Aが兵士たちに縛られているところに遭遇する。「やめろっ」そういって兵士たちにつかみかかる主人公、しかしあっけなく捕まってしまう。Aに銃口を向ける兵士。必死で抵抗する主人公、今にも引かれてしまう引き金。その瞬間、急に兵士の主人公を抑える手が緩んだ。カチッ。銃は空だったようだ。安心する主人公。すると、兵士たちやA、後から追いついたBが笑顔で主人公に向かって拍手をし始めた。「10㎏減量おめでとうございます!!!」困惑する主人公。一人の兵士がタブレット端末を持ってくる。その中では少しふくよかな自分が同様に笑顔で拍手をしている。「おめでとう!!!君は記憶を失った僕だ!君は覚えていないかもしれないが、最近は自分を極限まで追いやるダイエットが流行っているんだ。どうだい?君の体は見違えただろう?ははははは」。「記憶の復元を行いますので、こちらについてきてください。」Bが今までにない落ち着いた敬語で話し出す。「B、お前は何者なんだ!?」主人公が尋ねる。「自分はただのインストラクターです。」「Aは!?」「役者です。」
取り乱した主人公の叫び声が深い森の奥でやまびこする。

中学校の時の友達

中学校から会ってなかった里香から連絡があった。久しぶりに関西に帰ってきたからカフェで会おうとのことだ。二週間後に予定を取り付けた。
当日、カフェで会う里香と佳世。以前あった時よりも格段にお洒落に着飾っている里香。パンケーキの写真を試行錯誤して撮っている。佳世は中学校の思い出を持ち出してみるが、里香はどこかそっけない。中学生のころから優等生だった里香、口を開けば紙ストローがいかにすごいかやあの国の難民が大変だという話題だ。少し寂しく思いながら佳世は純粋に尊敬の気持ちを向ける。
佳世は里香の近況について尋ねる。里香は今大学のボランティアサークルの代表をしていて、外国の恵まれない子どもたちのために募金を集めているという。来年にはアフリカに留学するそうだ。
帰り際「里香は行動力があって偉いね。」「まあ就活にも使えるしねー」
席を立つ里香がいた机には、一口だけ食べて残されたパンケーキが置かれている。

バンパイア講

バンパイア講
夜の街中のシーン
大学生コウヘイが街をあるいている。手には箱が入ったビニール袋。
回想シーン(昼のファミレス)
 友人「時間とってくれてありがとう」
 コウヘイ「ぜんぜん大丈夫、それよりこっちこそ久々に会えてうれしいよ」
 友人「(微笑みながら)ならよかった」
 コウヘイ「にしても懐かしいな、部活のみんなでよくこのファミレス来たっけなぁ。あの頃何頼んでたっけ、たしかユウトは、いっつも金なかったからガーリックトーストばっか食ってて…」
 (メニュー表を眺めながら懐かしそうに話しているが、友人が遮る)
 友人「なあコウヘイ、思い出話もいいけど、健康器具とか興味ない?今ちょっと営業の仕事しててさ…」
夜の街中にシーンは戻る
コウヘイはビニール袋から箱を取り出す。箱には安っぽい字で「日光の30倍の粒子で毎日を健康に サンライトEX」と商品名が書かれている。箱の中身を取り出すと、明らかにただの懐中電灯であった。俯いてため息を吐くコウヘイ。
その瞬間、向かいから歩いてきた女性と肩がぶつかる。
「すみませんっ」
顔を上げるとそこには高校の同級生だったヒトミが立っていた。
コウヘイ「ヒトミちゃん?」
ヒトミ「コウヘイくん!」
シーンは別のカフェへ
コウヘイはコーヒーを、ヒトミはトマトジュースを飲んでいる。
コウヘイ「っていうことがあって大変だったんだよ」
ヒトミ「それは災難だったね」
コウヘイ「こんなのが1万もするなんておかしいって分かってたけど、あいつの頼みは断れないし…」(箱からライトを取り出し机に置く。またしてもため息を吐き苦い顔をする)
ヒトミ「友達思いなんだね。あっ、そうだ。コウヘイくんこのあと時間ある?」
(ヒトミは思いついたように明るい顔をする)
コウヘイ「時間、あるけど、どうしたの?」
ヒトミ「ちょっと頼みたいことがあって…」
コウヘイ「ヒトミちゃんもなんか売りつけるつもり?」(からかうように)
ヒトミ「ううん、もっといいもの」(静かに微笑みながら)
(コウヘイは少し動揺して唾を飲み込む)
ヒトミ「実はね…私…」
(コウヘイの鼓動が高まる、少し間があく)

ヒトミ「バンパイアなの」
コウヘイ「へ?」(予想外の返答に戸惑うコウヘイ)
ヒトミ「驚いた?」
コウヘイ「冗談でしょ?ヒトミちゃん冗談下手すぎ」(軽くひきつった笑いをする)
ヒトミ「ううん、ほんと」(落ち着いて)
コウヘイ「どういうこと?」(引き気味に)
ヒトミ「実はね、私の元カレがバンパイアで、私その人に噛まれちゃったの。こう、ガブって(噛むジェスチャーを交えて)。で、一年に一回は人の血を飲まないと生きていけない体になっちゃったの。そこでなんだけどさ、コウヘイくん。今年は君の血を飲ませてくれないかな?」
コウヘイ「えっ。なっ。何言ってるんだよっ!仮にそれがほんとだとして、ぼ、僕に何のメリットがあるのさ!」(動揺しながら)
ヒトミ「バンパイアになれば寿命が300年は延びるよ。あとは病気にならなくなる。」
コウヘイ「でっでもっ。人の血しか飲めなくなるんだろ?」
ヒトミ「はは。それは映画の中だけで、普通の食べ物もおいしいと感じるよ。ただ栄養にならないってだけ。」
コウヘイ「ほら、でもバンパイアって日光に弱いっていうじゃん?」(なんとか言い分をさがして)
ヒトミ「うん。だから日焼け止めは欠かせないかな。」(とぼけるように)
コウヘイ「人の血を飲んで暮らすなんて、そんなの絶対嫌だ。いくらヒトミちゃんの頼みでも、それは無理だっ。帰ってくれ!」
ヒトミ「私も無理。もう口が血の味だし。ごめんね、コウヘイくん」
ヒトミの鋭利な犬歯がテーブル越しにコウヘイの首元に近づく。手を振り回し抵抗するコウヘイ。そのとき、拍子でサンライトEXのスイッチがつき、ヒトミを照らす。
それに気づくヒトミ、手で顔を覆おうとする。だがもう遅い。
ヒトミ「ぎゃああああああああああああああ」
燃え出すヒトミ、次の瞬間にはヒトミは服を残して煙になってしまっていた。
コウヘイは、誰もいなくなった席の向かいで
額に汗を浮かべ荒い呼吸をしながらしばらく呆然としていた。
おわり

あとがき

書いた順番はめちゃくちゃですが、このなかで一番思い入れがあるのは『鉛筆』です。いつかお金がたまったら作りたいです。同時期に書いた『宇宙人ダンス』は書いてた時も今でもわけわかんないです。『貸した本返せ』は、貸した本が返ってこないとか思ってるくせに自分は図書館の本の返却期限を半年超えてたことの反省です。『ある太った男』はダイエットと筋トレがきつかったときに書きました。『バンパイア講』は『中学校の時の友達』に漫画『さよなら絵梨』と映画『ぼくのエリ 200歳の少女』を足した感じです。
おわり

追記

スマホに入ってた『シュレディンガーの小僧』と『繰り返す夢』二編を追加しました。『シュレディンガーの小僧』は見ての通り狂言『附子』とシュレディンガーの猫の思考実験を組み合わせたもので、『繰り返す夢』は高校の時書いた厨二創作です。

シュレディンガーの小僧

山奥の古寺に和尚と二人の弟子太郎、次郎が暮らしていた。

 ある日、和尚に急用ができてしばらくの間弟子たちが留守番をすることになった。「私の部屋の奥に壺があるが、決して開けてはならぬ。開けてしまえば忽ち猫又の祟りに遭うだろう。そうなれば、猫又はお前の生気を吸い取りお前を殺して成り代わってしまう。気をつけるんだぞ。」和尚はそう言うと出ていってしまった。

 それでも太郎が好奇心に負けて壺を開けてしまう。

「うわーーーーーーーっ」

太郎の叫び声を聞いて次郎が和尚の部屋へ向かう。
 次郎「おい。大丈夫か。入るぞ。」
次郎がふすまを開けようとする。
 太郎「待ってくれ。開けてしまえば私は死んでしまう。」
 次郎「なぜだ。」
 太郎「今この部屋には生きた私と死んだ私が両方存在している。お前が扉を開けてしまえば祟りが強まり私は命を失うだろう。」
次郎はこれこそ猫又の仕業と考え、図ってふすまを勢いよく開ける。
横たわる太郎。青ざめて息をしていない。
次郎はその場に突っ伏して自分の愚行を嘆くのであった。

『繰り返す夢』

私は夜の電車に揺られていた。白い蛍光灯が目に痛い。その列車は普段使っているものだったが、一つだけ違う点があった。目の前に、老翁が一人仰向けで倒れていたのである。その老翁は衰弱しきっており、今にも彼の息が止まりそうに思えた。

すると二人の車内に、停車を知らせるアナウンスが響いた。車掌は聴き慣れない停車駅を告げる。私は立ち上がって、再び老翁を見た。彼はその時既に息をしていないかったが私は気に止めず、開いたドアへ向かった。

気がつくと私は、祭の人混みの中にいた。赤い提灯が無数に灯っている。色とりどりの屋台からは香ばしい匂いが漂い、どこからか縁日の喧騒の間からお囃子も流れてきていた。にも関わらず、私は「これは百鬼夜行だ」としばらくして突然気付いた。その瞬間、あたりは魑魅魍魎で溢れ返り、私がヒトだと思っていた「それ」はみるみるおぞましい物の怪の姿へ変わっていった。祭りを所狭しと跋扈するのは、天狗、悪鬼、狐狸、入道、知る限りのあらゆる怪物であった。

私は直感的に「ここに居てはいけない」と思った。しかし、抜け出そうとするも、その物の怪の群衆に流されてうまく身動きが出来なかった。手で妖怪を押しのける。逃げなければ。焦りに鼓動がはやまるにつれ、お囃子の音も次第に速くなっていった。もがけばもがくほど圧迫されていくようだった。自分の顔が赤紫になる。妖怪たちの体の中に埋もれていく。息が詰まる。駄目だ。お囃子は極限まで速くなり、音が1つに重なった瞬間、耳鳴りがした。

その瞬間、視界が白くなった。私は死を覚悟した。ああ、

呼吸が止まる。

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