学校改革で有名になった麹町中学校の元校長である工藤勇一さんと、教育哲学者の苫野一徳さんの対談本。
帯に「学校は、必ず変えられる。教育の未来を描き直す必読の書!」とも書かれている。
さらに、「多数決の問題点、わかりますか?」「誰一人置き去りにしない社会って、こうやってつくるんだ!」
工藤勇一さん、苫野一徳さんの他の著書を読んだことがある人なら、一気に読めてしまうと思うが、まだまだ学校文化が染みついている人には、?なところがあるのかもしれない。
私が一番気になったところ。2章の「教育基本法の問題とは」。
「心身ともに健康な国民の育成」と書かれているが、私には、学校は心身ともに健康であることが前提で動いている仕組みのように感じられる。
なぜなら、欠席しない前提のカリキュラムなので、病欠あるいは障害等があって皆と同じように参加できない場合は、家庭でフォローもしくは自己責任になってしまっているからだ。長期欠席した経験がない人にはこれは実感しにくいのではないか?
また、「人格の完成を目指し」とあるが、工藤勇一さんも指摘されているように完成された人格という言葉が曖昧で、学校を卒業して人格は完成するのか?という疑問が残る。そもそも、日本の規則の文章は、都合のいいように解釈されがちな書き方がされているような気がする。改正される機会があるのなら、もっとわかりやすく納得できる文にしてほしい。
工藤勇一さんは、教育基本法と比較して、デンマークの国民学校の目的規定を挙げている。
北欧の学校がすべてうまくいっているというわけではないが、少なくとも目的についてはこちらの方が具体的で保護者としても受け入れやすい。
忙しくて読む時間がない!という人でも、2章のまとめの1ページがコンパクトにまとまっているので、ぜひ読んでもらいたい。
学校の先生や、学校を変えたいと奮闘している先生に気づいた保護者にも。
現在の麹町中学校では、工藤勇一さんの後、三代目の校長になってから、学校改革の内容が一部逆戻りしている現象が起きているという。
全国的に学校改革が進んでいるように見えても、これがあるから安心はできない。
我が子が高校を卒業し保護者としての役割がほぼなくなった今、残念ながら晴れ晴れとした気持ちは全くない。この思いをどこにぶつけたらよいのか考える日々である。