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美しのくにの風

深呼吸して
君を想う

愛する猫に
話しかける時の
優しい仕草を
愛する音楽を奏でる時の
真摯な眼差しを
大切な友と共に過ごす時の
満ち足りた微笑みを

眼を閉じて
君を想う

大きなバッグを
苦もなく肩に掛け
滑るように坂道を上り
帰ってくる足り取りを

君が嘗て
瞳を輝かせながら
受けた鉄道の風
今でも、君にとって、それは
特別なものであり続けて
いるのだろうか
君は、だからこそ、
鉄道の風に
なりたかったのだろうか

美しい島並を見ながら
芳しい無花果の香りを香きながら
季節深まる丘陵を望みながら
ふるさとを
旅の思い出の地を
あるいは、初めて訪れる景色の中を
君は、風になり、
吹き抜けているのだろうか
君の大切なこのくにには
今でも、まだ
こんなに美しい虹が掛かる

命が、いつか尽きるように
このくにも、いつか
滅びの時を迎えるのだろうか
あるいは、それは、
別の、美しい姿に
生まれ変わるということだろうか

このくにが、どうか
このままずっと
美しさを、どこかに
留めていることができますようにと
君は、祈りながら
駆け巡っているのだろうか

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