40.まさえ溺れる

 臨海学校の日々のタイムスケジュールは…

朝起きて各自お布団を片付けたら、お父さんやお母さん、親戚の叔母さんやお友達にお手紙を書いて、先生に提出してから少し勉強、そして朝の礼拝。
校長先生のお話、讃美歌と校歌の夏を歌って、終わったら朝食。

その後、海へ行って、帰ってきたらお昼ごはん。
お昼寝タイムがあって、午後の海。
まだ水着が乾き切っていないから、着るのがちょっと大変。
海でおやつタイム。
その時もお祈りは欠かせない。

少し海に入って帰ってきたら、お風呂タイム。
お宿から外に出て、砂利の音を楽しみながら、敷地内にあるお風呂がある別棟へ。
お風呂場に向かう時に、ガラス張りの食堂の横を通り過ぎる。
その食堂を覗き込み
「ここでゴハン食べたいよね。」
と話していると、
「お前らなに喋ってるんだよ〜」
とWくんとIくんが走ってくる。
私たちは急いでお風呂場に走った。

お風呂が終わったら少し勉強して、待ちに待ったお夕食。
あれ…勉強…してたかな…遊んでた記憶しかない。

そんな、楽しい一週間。

そういえば…
父は泳げない私を心配して、プールで泳ぎを教えてくれた。
平泳とクロール…何度も練習した。
でも、海ではあまり役には立たなかった。

何日かすると、日焼けで皮が剥けてくるので、Yちゃんと剥きっこした。
誰がたくさん剥けるか…、そんなくだらないことが楽しかったりする。

午後の海の間にあるおやつタイムは、牛乳と果物。
最後の日は、お宿の方がお汁粉を作ってくれた。
冷えた体に温かいお汁粉。
みんなで浜辺で座って食べたお汁粉の味は、忘れられない。
あんこが嫌いだったのに、それからお汁粉が好きになって、今はたまに自分で作っている。

畳のお部屋で、みんなで食べる食事の時間はは、私にとって一番幸せな時間だった。
特に朝食。
朝起きるのが苦手なので、家で食べる朝食は、無理やり口に押し込まれたりするので、こうやって自由に美味しく食べられる朝ごはんの時間が嬉しかった。

臨海学校2日目頃だったか…
先生の後について、みんなで手を繋いで海に入った。
私の両サイドには、NちゃんとNっち。
ある程度海に入ったとき、E先生が
「この辺りで泳いでみよう。」
と言った。
そしたら…
私の両サイドにいた二人がいきなり手を離した。
考えたら、私は二人よりはるかにちっちゃい。

え…
足がつかない!!

……で、溺れた。

必死で岸に向かおうとするけれど、泳げないので沈んだ。

誰かの声がする。
「先生!そめが溺れてるッ!!」

急いで先生が来て、助けてくれた。
めちゃくちゃ泣く私を見て、
「スイカだよ。」
先生は笑ってスイカをくれた。
NちゃんとNっちも笑っていた。

なに笑ってるの!!
あんた達が手を離したからでしょッ!
背丈を考えなさいよ!
先生も!!
わたし、死にかけたんだからね!!

と心の中で叫んでいた。

でも、みんなで食べるスイカはサイコー!!
私はすっかり元気になった。

この話は、今でも
「臨海で、そめ溺れてたよね。」
と言われることがある。
勝手に溺れたのではない。
手を離した二人がいけないのだ…
でも、当の二人はすっかり忘れている。

6年生の臨海学校は、受験があるので自由参加となる。
私も行きたかったが、母に反対された。
「あなたは受験勉強があるでしょ。」

もしこれで、強引に行ったとして、万が一落ちたら一生言われる気がしたので、母の言う通りにした。

仲良しYちゃんは臨海学校に参加し、遠泳に出て黒帽をもらった。

Yちゃん、すごいなぁ。

一週間、臨海学校に行っても行かなくても、そんなに変わらない気がした。
その一週間もずーっと塾に通っていたけれど、私は臨海のことを思いながら毎日過ごしていた。

全国の受験生に言いたい。
一生のうちのたった一週間、楽しいのを我慢するより、思いっきり楽しんだ方がいい!!
大人になっても、
あの時、「行きたい」って言えば良かったなぁ…
と考えるオバさんになってしまうかもしれない。

たかが一週間
されど一週間

…続く……🍉


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