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日本で増えつつあるモラルハザード

中古車販売大手のビッグモーターが、自動車保険で保険金の不正請求を行なったことが話題となっている。

7月現在、修理代を水増し請求したとされるのは少なくとも1,275件、請求総額は4,995万円に及び、外部弁護士で作る調査委員会の報告書では、ゴルフボール入りの靴下を車体にぶつけたり、工具のドライバーでひっかいて傷をつけ、修理範囲を広げるなどしていたことが明らかになった。

経営陣から工場に対し、修理による収益として1台当たり14万円前後のノルマが課された結果、工場長同士の情報交換によって不正の手口は広まったとされる。

契約者の中には、本来なら使う必要のなかった自動車保険を使って等級が下がり、保険料が割高になっているケースもあるとみられ、損保各社は今回の不正請求で等級が下がった契約者の洗い出しと、正しい修理費用を伝え、本来の等級に戻すかの意向確認に追われることになる。


浪費のためなら実の娘も平気で犠牲にできる

とても許し難い詐欺事件であることには変わりないが、傷つけたのが車という“モノ”だった点においてはまだ幾分かマシである。

今月18日、8歳になる小学生の娘に十分な食事を与えず低血糖症にさせ、入院で支払われる共済金を騙し取ったとして大阪の34歳の母親が逮捕されるという、何とも痛ましい事件も起きた。

何度も繰り返せば糖が不足し、脳にダメージを与えて意識が無くなるといった恐れもあるケトン性低血糖症を、実の娘に成人用の下剤を飲ませてまで誘発させたのだ。

容疑者の口座には2018年以降の5年間で計570万円が振り込まれており、警察は遊興費を得る目的で娘を入院させて共済金などを受け取っていたと見て捜査を進めている。

当の容疑者は知人男性から毎月数十万円の支援を受けていたものの、浪費が原因で1月に打ち切られ収入が激減、生活水準を下げられず困窮する可能性もあったという。

共済金は外食やエステの費用に充てていたようであるが、たかだか数百万円・数千万円のために娘だの車だのと信用を犠牲にできるのは、『お金』が生み出す魔力はすごいからと言うべきなのか、『お金』の力はやはり偉大だとでも言うべきか。

人間とは所詮紙切れのためにこうも愚かな行動を取れるものかと驚かされるばかりである。

『SOS』に気付けるはずの誰かは何故か叩かれない

詐欺目的の請求に対しても保険金が支払われてしまっている事実に疑問を抱く人もいるだろうが、実際のところ、医師の診断書や修理の見積書は正しいものとして処理されるに決まっている。

気付けるとしたら現場でか、保険会社の担当者くらいなものだろう。

給付金を契約者らに正しく届けるためには、保険募集人による一次選択の必要性が定められており、給付金の搾取が加入の目的になっていないかも含めて見極めは本人と面談している担当者への依存が強い。

入院給付金の請求があれば、請求した人の元に足を運んで状況を確認するくらいは求められるのが担当者の役割だ。

病院なら、たとえ複数の医院を渡り歩いて虐待の発覚を防ごうとしても、マイナンバーで通院履歴等を医師や看護師が閲覧できれば、疑問を持つきっかけを増やせる。

ただでさえ人手不足で激務の医者を、これ以上酷使するのかと叩かれかねないが、一向に改善しない患者に施す治療について、過去の治療歴も踏まえて最善を尽くすのが医者のすべき仕事というものである。

今回のケースでは難病に伴う持病を持っていたとは言え、43回も入退院する前に周囲が気付ける仕組みを作るためには、頓挫しかけているマイナンバーカード含め、情報の一元管理化は避けて通るべきところではない。

仕組みを悪用すれば簡単に儲けられるのが日本の現状だ

さて話を戻すと、今回の両事件において気になるのは、あくまで損害保険会社は被害者であり、責任の所在として保険担当者がまるで関係ないものかのように取り扱われている点である。

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