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ハリポタの映画を観るためだけの友達がいた

ハリポタの映画を観るためだけに会う友達がいた。
過去形なのは映画が完結して、もう会うことがないからだ。

彼女(以下N)は高校の同級生だった。通うコースは違っていたけど、共通の友人がいてそれで仲良くなった。たまたま通学に使っている路線が同じで、一緒に下校することも多かった。

当時、自分も彼女も映画が好きだったけれど、実のところジャンルが被っていなかったように思える。Nはファンタジー映画、邦画(ジャンルと言っていいのか?)が好きで、私はアクション映画や吸血鬼映画が好きだった。そこそこ本も読んでいたが、いわゆるYA文学や児童文学には詳しくなかった。

「ハリー・ポッターを観に行こう。君は絶対気に入ると思うよ」と言って誘ってくれたのはNで、共通の友人もいれて4人で観に行った。イギリスの児童文学が原作で魔法使いの話くらいとしか予備知識がなかったが、余計な知識がなかったことが幸いしてか、純粋に映画を楽しむことができた。
(Nや他の友人は原作を既に読んでいて、少々納得がいかないシーンもあったみたいだった)

Nはそれから原作を読んだことがないという私に本を貸してくれた。ハリー・ポッターが気に入ったなら、と『ダレン・シャン』も貸してくれた。これも面白かった。

ハリポタの映画が公開される度にNと一緒に映画館に行った(実は「秘密の部屋」だけ観に行っていない)。高校を卒業して進路が別々になっても、共通の友人が消えても、Nが先に就職しても、映画はよく一緒に行った。

高校時代のNは映画に凄く詳しかったけれど、最終的に映画よりヤクルトスワローズが趣味になった。きっかけはよく分からなかったけど、好きな選手がいたようだった。それまで野球が好きという話も、スポーツが好きという話もしてこなかったからちょっと驚いた。

シリーズ最後となる「死の秘宝」の鑑賞後、「これで最後だねー」といった会話をしたような気がするが定かではない。
嘘みたいな話だけど、本当にあの映画以降、Nと連絡はとっていない。
「ファンタスティック・ビースト」の一作目が公開された時、Nのことをちらりと思いだしたが、「今更連絡してもなあ」と思った。
彼女の連絡先を無くしてしまったし、映画をきっかけにしなくても会いたかったら会っているはずだ。それがないということは、私もNも関係が終わっていることを認めているのだ。

「死の秘宝」の後に、「ハリポタは終わっちゃったけど、これからも会おうね」と言えていたら、今も友人だったのかと考えることはある。でも遅かれ早かれ、どこかの段階で消える縁だったと思う。
期間限定の不思議な映画友達だった。今何してるかな。








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