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ハムスターと私

心は合わせ鏡。動物相手は特にそう。

 私は、「心を通わせる」ということが苦手だ。変に思われないか。警戒されないか。拒まれないか。心を開こうとか、距離を詰めようとか、そういう時に、嫌でも考えてしまう。
 動物相手ですらそんなんじゃ、私に、友達なんてできるはずがない。


 私は常々、触れ合える・・・・・ペットを欲しがっていた。魚などではなく、ふわふわな毛並みを撫でることが出来るようなペット。だから、父が会社の同僚からハムスターをもらってきた時は、大喜びしたものだ。

 嬉しさのあまり、世話は全て私が担った。弟は面倒くさがるし、ペットの世話は子供たちの自己責任というのが約束で、両親はノータッチだったため、誰からも文句は出なかった。しかし、弟は、ハムスターにおやつをやることだけはやりたがった。
 その結果。弟はすぐに、ハムスターと仲良くなった。弟の手の平に乗ったハムスターは、そのまま腕を登って彼の服に入り込むこともあった。くすぐったそうに笑う弟は、とても幸せそうだった。ただ、私が手を差し出すと、ハムスターは近づいてきたものの、首をかしげた後に指先を噛んできたのだ。ケージの掃除やエサの交換を日々行っていた私は、よく住み家に入り込んで荒らしてくる人という認識をされていたようなのだ。
 今思うと、おやつなどを使って、粘り強く警戒を解いていけば良かった。しかし私は、たった一回の出来事に怖気づいて、二度とハムスターの前に手を差し出すことができなかった。

 結局、ハムスターが死ぬまで、その距離感は変わらなかった。


 私が不安に思うから、ハムスターにもそれが伝わってしまったのだろうか。こちらから心を開けば、歩み寄れたのだろうか。
 わからない。でも、ただひとつ確かなことがある。

 それは、私はあれから何も変われていないということ。





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