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読書日記(5)

 こんにちは、村崎沙貴です。読書日記第五回。今回紹介するのは、三川みりさんの「一華後宮料理帖」シリーズです。
 三川みりさんといえば、「シュガーアップル・フェアリーテイル」がアニメ化されましたね。第一期、第二期ともに追いかけて、見事に作品ファンとなりました。それがきっかけで、三川みりさんの作品に興味を持ったんです。原作はまだ最新刊まで追いつけていません。

 さて。「一華後宮料理帖」全十一巻読了。ひとの気持ちを揺さぶる物語とは、こういうもののことを言うのかもしれないと思います。少なくとも私は、気持ちがめちゃくちゃになるほど心動かされました。特に最終巻では涙を流し、ドキドキハラハラ。胸が、締めつけられたりいっぱいになったりと忙しかったくらいに感動しました。登場人物みんな、裏切り者や黒幕やどうしようもなく傲慢だったり性格が悪かったりする人達ですら憎めない。むしろ私は、そういう人達にこそ感情移入してしまいました。みんなにそれぞれ物語があり、それをちゃんと描く。本当に、この物語に出会えて良かった。そう思わせてくれました。

ここからはネタバレあり。ご注意を。










 途中巻からどんどん展開が悲劇の側に転がっていって、大いに気を揉みました。しかし、その中で物語が壮大になっていったり、皇帝陛下がみるみる成長を遂げていったりするのは読んでいてとてもワクワクしました。最初は互いをライバル視していた四夫人が、登場巻の次の巻からもはや四人で一セットの癒やし枠のようになることは予想外でしたが、違和感はあまりありません。後宮において皇帝の心を慰めるように、物語で読者の心の慰めになってくれたように感じるのです。
 どの人物も好きなんですが、好きな登場人物をあえて挙げるなら、龍祥飛、蔡伯礼、周考仁、迅景有でしょうか。全然絞れていませんね。龍祥飛皇帝陛下は言うまでもなく。シリーズを通して誰よりも成長し、理美の恋の相手・朱西以上に(少なくとも物語の中では)長く理美と支え合った人物です。本当にご立派になられましたね、と(何様なんだと突っ込みたくなるけれどともかく)感慨深い思いを抱けます。次に蔡伯礼。自己犠牲を厭わない愛情深さと、優しく慎ましげな物腰。卑しさを抱え、受け入れながらも心は腐らせず、逆にそれを、守るべきものを守ることに利用する。彼の姿勢をとても好ましく思います。そして、余計な一言で台無しにしますが、彼の挿絵が美しすぎることも理由のひとつではあります。次に、周考仁。最初は怖かったし、あまり好きではありませんでしたが、頑なで複雑な心持ちが明かされたあたりから興味が出てきました。そして、わだかまりが解けた場面で一気に好きに。それからは強くて有能な感じが少し減ってしまいましたが、内心を覗かせる所を見る(そういう記述を読む)たび微笑ましくって。あの周考仁が、親ばか。なんだか、ギャップがあってすごくいいなあ、なんて(←台無し)。最後に、迅景有。悪の権化みたいで、本性を知った所で大半の読者が嫌いになるであろう人物です。しかし、私が彼に興味をひかれたのは裏切りが露見した場面から。ただの軽薄な態度が目立つ味方であった間はそこまで意識していませんでした。迅景有に関しては、好きというか、興味深い。心に引っかかって残る。そんな感じでしょうか。処刑されてしまいましたが、私はなぜか、自業自得だ、とはどうしても思えなかった。朱西の身代わりになってくれたから、ではありません。どこかで歪んでしまって、もはや正せなくなった。周考仁と同じように、解きほぐされれば、彼の本質が見えたのかもしれないのに。そして私は、それを見てみたかったのでしょう。ただ、結末の展開としてはあれが美しかったと思います。

 もう一度言います。本当に、読んで良かった。