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「ひとりぼっち」のクリスマス(1)

 これは、無邪気さを失った、とある少女の物語。

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 下校するバスの車窓から、遠く、闇に浮かび上がる光の橋が見える。イルミネーションだ。街に並ぶ店では、クリスマスソングを流し、ツリー用のオーナメント、サンタやトナカイのオブジェなどを売り、クリスマスセールの宣伝を打っている。ハロウィンが終わった途端にこれだ。クリスマスはまだまだ先なのに気の早いことだ、と毎年思う。


 クリスマスを一緒に過ごす人なんていない。

 一応、家族とのパーティーはあるものの、幼さ故に無神経な弟や、無駄に心配性な両親の相手をするだけの時間だ。楽しみでもなんともない。
 家族の中で、私のイメージは物を知らなかった低学年の頃で時を止めているらしい。だから、家族の前では笑顔を張り付けて、無邪気に振る舞わなければいけない。少しでも元気がないとみんな心配するより先に怪しんでくるので、面倒だ。

 じきに、学校の教室内で「クリパ」とやらのお誘い合戦が始まることだろう。私は、誘われたためしがない。自分の真横で他人が他人を誘っている状況に、なったことはあるが。無論、誘う側になる訳でも、誘わずとも集まる面子に入っている訳でもない。


 そんなこんなで、クリスマスは少し苦手だ。