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現実的な戦い方とJ2復帰へ(2022シーズン 松本山雅F.C 前半戦総括)

2021シーズンJ2最下位で終え、今季からJ3に舞台を移した松本山雅だがシーズン折り返しとなる第17節までに11勝4分2敗の勝ち点で2位となっている。J2への自動昇格圏内であり良い位置で折り返せたと思う。

今期の松本山雅は昨季途中に就任した名波浩監督のもと2年目のシーズンを過ごしている。シーズンが始まる前に山形からスペイン人GKビクトル、岡山からブラジル人MFパウリーニョを獲得(2019シーズン以来の復帰)した。元日本代表安田理大がフリーで加入するなど新卒、レンタル復帰合わせて12人がチームに加わりセルジーニョや阪野豊史ら13人が退団した。

失点が多かった序盤戦の戦い方

開幕戦ではカマタマーレ讃岐と対戦。フォーメーションは3バックが主体だった昨季から変わり4-4-2を採用。先制を許す苦しい展開も前半終了間際に横山歩夢が待望の初得点、後半アディショナルタイムにはコーナーキックから外山凌が合わせ逆転でJ3初勝利を飾った。続く第二節YSCC横浜戦も勝利したがホーム開幕戦では鹿児島ユナイテッドに1-2で敗れた。その後も4-4-2をベースに戦うも6節までに8失点を喫するなど守備面の課題が目立った。ビクトルのスーパーセーブにも救われたが守備の連係面ではうまくいっておらず、第7節のアスルクラロ沼津戦あたりから名波監督は戦い方を変えたと感じた。その沼津戦では守備のハマりの悪さから前半途中でシステムを3バックに変更し、そのまま手堅く横山の虎の子の1点を守り切り首位に浮上した。

機能し始める組織的守備と戦況を読んだシステム変更

このあたりで二年前から我慢強く起用し続けてきた常田克人や大野佑哉らを中心とした守備が機能し始め第7節から第12節までに失点は僅かに1に抑えた。CBがコースを限定することでビクトルがスーパーセーブを連発しなければならない状況はかなり減った。第13節には愛媛FCに今季二敗目を喫するものの、いわきFCやカターレ富山ら上位対決を制し前半戦を終えた。試合中でもスムーズにフォーメーションを変えるなど今まで山雅では見れなかったこ相手に合わせた戦い方をしていた。また戦況を読み、選手側が監督にシステム変更を申し出ることもあったようだ。

名波監督の本当にやりたいサッカーはやれてない!?

前半戦最後となった福島ユナイテッド戦前には名波監督とは親しい間柄である福島の服部監督が「もしかしたら名波監督が本当にやりたいサッカーはできてないのかもしれない。」と語っていた。確かに今季の山雅はJ2昇格は至上命題であり勝ちに重点を置いているのは間違いない。振り返ると2019年まで山雅を率いた反町康治監督も少しずつポゼッションのエッセンスを加えていっていたと思う。やはり昇格という絶対目標がある以上、現実路線を行くしかないしその判断は間違っていないと思う。中長期的に名波監督のサッカースタイルを築き上げていくことが大切だ。

前半戦MVPと今後への期待

昨シーズンからフィニッシュの意識が高まり、アンダーカテゴリーの日本代表で10番を背負う横山や男気復帰でチームを支えるパウリーニョ、WBながら5得点3アシストの外山など挙げればキリがないMVP候補だが個人的に一人選ばせてもらうと大卒ルーキー菊井悠介だと思う。得点アシストこそ1G2Aだが数字以上の活躍をしている。止める、蹴るの基本技術がしっかりしており単調になりやすい攻撃に変化を加えられる貴重な存在として地位を確立している。彼の魅力は山雅でも唯一と言っても過言ではないライン間で受ける動き、またそこから前を向けるということだ。名波監督も前方向への選択は口酸っぱく言っており体現している選手の一人だ。Jスタッツによると1試合平均チャンスクリエイト数は1.8でリーグでも12位の好成績である。後半戦では得点のところはこだわってもらいたいと思う。こぼれ球への反応や嗅覚を活かし、彼が得点源になればJ2昇格へ近づくだろう。さらに怖い存在へ期待は高まる。ただサポーターも上位カテゴリーから引き抜かれないかというジレンマに悩まされるだろう(笑)

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