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国際バカロレアDPの学びは「大人の教育法」

国際バカロレアの教育プログラムは、年齢に応じてPYP(3歳〜12歳)、 MYP(11歳〜16歳)、 DP(16歳〜19歳)、IBCP(16歳〜19歳)などに分かれています。

これらの教育プログラムに共通する目的は、IBの使命やIBの学習者像に示されているように国際的な視野を持つ人間の育成です。

DP(Diploma Programme)は、2年間のカリキュラムを履修し最終試験を経て所定の成績を収めると国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得することが可能であるため、大学進学のためのプログラムと考えることもできます。

しかし、DPは大学進学のための学びだけではなく、その先の学びも見据えて考えられた国際的な視野を持つ人間育成の教育プログラムです。

今回は、高校卒業後も(大学進学も含め)学び続ける学習スタイルを身につけるように考えられているDPの学びについて説明します。

 IBディプロマプログラム(DP)は、大学在学中の学業の成就やその先の成功に向けての礎をつくることを目指しています。また、DPでは、生徒が「積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続ける」(「IBの使命」より)ことが奨励されています。

国際バカロレア機構 ディプロマプログラムにおける「指導」と「学習」より

「大人の教育法」

国際バカロレア教員向け資料には、DPの学習について以下のように書かれています。

子どもの教育法か、それとも大人の教育法か

 ペダゴジー(Pedagogy)は、「子どものを教えるための技術と科学」(Ozuah 2005)と定義されていますが、それに対してアンドラゴジー(Andragogy)は、大人の学習を助ける技術と科学であると捉えられています(Knowles 1980)。16歳から19歳のDPの生徒に適した教育方法を検討する際は、生徒の発達段階により適した指導を設計するために、いくつかの子どもの教育法から離れて、より成人教育的なアプローチに近づく方が有効である場合があります。

 ノウルズ(1980)によると、子どもの教育法は、学習者に以下のような特徴があるととらえる傾向があります。
 ・教師に依存している。
 ・科目中心の学習を好む。
 ・外的動機づけ要因によく反応する。
 ・教室における学習に関連する十分な人生経験を持たない。
 対照的に、成人教育的アプローチは、学習者が以下の資質を持っていることを仮定する傾向があります。
 ・自分自身の学習に責任をもち、学習計画と指導の評価に関わることを好む。
 ・自分自身の人生経験を、学習のための豊かなリソースとして利用できる。
 ・内的思考の学習よりもむしろ問題中心の学習を好む。
 ・外的動機づけ要因よりも内的動機づけ要因によく反応する。
 ・すべての学習について理由および重要性を理解することを求める。

 DPの生徒、および彼らの学習者としての特質が、子どもの教育法に基づく指導と成人教育法に基づく指導のどちらの体系により合致するかというのは、考察に値する興味深いテーマです。DPが、大人としてさらに学習するための準備であるのならば、まだ学校にいる間に、より成人向けの学習方法に慣れることは生徒にとって有益かもしれません。また、探究を基盤とした学習は、ほとんどのIB資料で説明されているように、子どものための教育法というよりは、いろいろな意味において、より成人教育的な指導方法であるといえます。

国際バカロレア機構 ディプロマプログラムにおける「指導」と「学習」より

この資料の指摘によれば、今までの学校教育(小学校・中学校・高等学校)のイメージは、「子どもの教育法」と考えることができます。確かに、生徒は教師に依存する傾向が強く、どの科目が得意か不得意かを考え、テストなどの分かりやすい評価に反応し、授業内容と実生活を結びつける傾向が弱い印象があります。

一方で、「大人の教育法」は、学習と自分の満足度を結びつける「大人になって始める趣味」のイメージが近いと思います。「大人になって始める趣味」は、趣味を始めるのも自分ですし、どの程度上達したいかを決めるのも自分です。

つまり、国際バカロレアの探究を基盤とした学習は「大人になって始める趣味のような学び」に慣らしていくような学習であり、DPの学びは「大人の教育法」に慣れることが求められています。

「大人の教育法」で学ぶということ

「子どもの教育法」に慣れた生徒にとって学習は「〜をやれば良い」というようなやり方だったのかもしれません。しかし、「大人の教育法」であるDPの学びでは「〜をやれば良い」という発想ではなく、その学習内容に興味・関心を持ち、その程度学ぶのかを自分で決めながら学ぶことが求められます。

さらにDPでは、その学びの成果が大学入学資格(国際バカロレア資格)とその成績(DPスコア)として反映されます。つまり、DPで学ぶ生徒は「大人の教育法」で学んだ上で、その学びの成果が評価されます。「大人になって始めた趣味」が評価され、その後の人生に影響すると考えると、DPの大変さが理解できると思います。

この大変なDPをサバイブできた生徒には、DPの目的である“大学在学中の学業の成就やその先の成功に向けての礎”がある程度身についているでしょう。

全ての生徒(中学生・高校生)が、DPの「大人の教育法」での学びに向いているわけではありません。DPでの学びを希望する生徒(中学生・高校生)とその保護者には、DPの「大人の教育法」の学びを理解し、生徒の性格や能力を理解した上で、DPを選択してほしいと私は考えています。

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