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随筆: ショート・ケーキの味 ―老夫婦のクリスマスー

    今日は12月24日、クリスマス・イブの日だ。全国的に久しぶりの大雪である。瀬戸内沿岸部も、近年では珍しく12月に雪が降った。まさしくホワイト・クリスマスである。

 子どもが巣立って、もう既に15年以上が経つ。子どもが自宅にいた頃は、大きな丸いケーキを買って食べたものである。しかし、それ以来、クリスマスなんて祝ったことがない。

 妻がどうした訳か、近くのコンビニでケーキを買って来た。夕食の時、デザートとして、妻が小さなショートケーキを2つ取り出した。そう言えば、子どもが小さかった時は、みんな口の周りを、クリームで白くしながら美味しそうに食べたものである。

 「こうしてケーキを食べるなんて久しぶりだね」と私は言った。「そうね」と妻が返した。久しぶりに懐かしい歌を聞こうと思い、古いレコードを取り出した。アンディ・ウイリアムズが歌う甘い「ホワイト・クリスマス」の歌声が流れてきた。

 小さなケーキを一口ずつ、味をかみしめるように食べた。「甘さ控えめで美味しいね」と言うと、妻もうなずいた。

 ささやかではあるが、心がなごむ老夫婦のクリスマス会である。

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