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すれ違い

少女は言った
この先に進むなと
星が輝いている午前2時頃に

私は進もうとした
少女の忠告を無視して
私にはやらなければならないことがあるのだ。
少女の忠告を無視してしまうくらいに
大切なことを

いつもの私なら
違和感に気づけただろう
なんでこんな時間に
こんな場所に
少女が一人でいるのかと

でもそれに気づけないくらいに
私の決意は固く
周囲を見れていなかった。

少女の前を通ろうとすると、
突然視界が回ったと思えば
私は地面に押しつけられていた。
少女が押さえているとは思えないくらい
強い力で。

少女は、目に涙をうかべながら
お願いだから、私の言うことを聞いて
と何度も、何度も
状況が理解できていない私の顔を見て
私に忠告していた。

気づいたときには、私は寝ていた。
あたりを見渡したが、少女の姿はなかった
きっと夢を見ていたのだろう
そもそもこんな時間に少女なんているはずもないし、少女が大人を押し倒すほどの力があるとも考えずらい。
そう確信し、ふと時計を見て時刻を確認した
午前5時30分。
もう日も出始めていた。

寝たおかげか、寝ぼけているのか知らないが
なんだか、呪いがとけたような気がした。
恐らくだが私自身はここに来ることを望んでいなかった。
恐らく私以外の誰かが、それとももう一人の自分が、私を乗っとったに違いない。
そうでなければ、深夜に一人で、崖なんかに来ないだろう。
今日は日曜日明日からはまた会社だ。
憂鬱だが、生きるためには仕方ないことだ。
そんなことを考えながら朝日を眺めていると、
崖の近くにジュースのようなものと、多くの花束が置かれていた。
その真ん中には写真のようなものが置かれていた。
興味を持った私は、写真を見るために
ゆっくりと歩き出した。

写真の中の人は私はよく知っていた。
友達でもない、恋人でもない、恩人でもない
夢で見たあの少女だった。

理由は分からないが、恐らく少女は、ここから飛び降りた。
少女が止めてくれなかったら私もきっとあの崖から身を投げていた。
何で少女は、私を助けてくれたんだろう。
その疑問だけが私のなかに強く残り続けた。




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