見出し画像

「花火終わりに2時間歩いた日」2024/7/17

・鎌倉花火大会に行ってきた。仕事が山ほどあったのだけど、9000円の有料席を購入していたので、後に引けなかった。

・花火は海上に浮かんだ小船の上から発射される。タイミングはプログラムで組まれていて、少し離れたところから操作している。一体何をどう調整したらあんなふうに形を作ったり、動きをデザインしたりできるのだろう。

・カリフラワーみたいに小さい花火が連発するやつが好きだ。火薬が焼き切れる時のチリチリという音も夏らしくて良い。

・長く尾を引くシャワーみたいなやつの連発も好きだ。なんだか神様からの恩寵という感じがする。

・海と花火と、潮の香りが混じった生ぬるい空気。露天から漂ってくるチョコバナナとかお好み焼きとかイカ焼きの匂い。道に座り込んでいる若い男女。バイクのエンジン音。浴衣を着てヘアセットした女の子たち。明るくテンポの良い話し声。

・火の玉が真っ直ぐに夜の空を登っていく様が美しく、力強く感じられて良いなと思う。そして、あたりを昼間のように明るくして、たくさんの歓声と共に、最初から何もなかったみたいに消える。花火のように散れたらかっこいい最後だなぁ。

・火薬の爆発が空気を震わせて、遥か遠くにいる観覧席の自分にまでとどく。戦時中もこんな感じだったのかな。

・人が多すぎて、もはや人と認識できない感じになってきた。人の群れがうごめく線と形と色の集合体に還元され、高い/低い周波数が空気を震わせて、波のように寄せては返す有象無象。それらをかき分けて、足を交互に前に出し続けていると、足が痛くて息が切れて、なのに大して景色は変わってなくて、でも立ち止まってもしょうがないので無心で進む。なんだか人生だなと思った。

・暗闇の中で、知らない子供の影がぴょんぴょんと飛び跳ねるのだけど、その小ささと細さになんだかハッとする。ガラスの工芸品のようなのに、とにかく元気が良くて、そばに居てはらはらしてしまう。壊れてしまいませんように。盗まれてしまわないように祈った。

・電車にはとてもじゃないけど乗れない。乗車率300パーセント。次の電車も、その次の電車も同じ。歩くしかない。

・極楽寺駅、好きだなと思った。山を切り開いて作った駅で、ホームが半地下にあり、手すりごしにホームを見下ろせる。炭酸水をのんでしばし休憩した。

・カレー屋の珊瑚礁、今度いかないと。前に職場の人におすすめされたんだけど、名前が思い出せなかったのだ。ラッキー。

・2時間ほど経って、気がつくと自宅の最寄りのコンビニの前に立っていた。レジのお姉さんが気持ちの良い人だった。「わたしは、さっき、2時間も歩いてきたんですよ。暗い山道の中をとぼとぼと。なので嬉しいんです。帰って来れて、ね!」と報告したくなったが、わたしはお姉さんと顔見知りではなく、そんなことは決してできないので、最大限の笑顔を送っておいた。笑顔すら顔の筋緊張の状態変化としか感じられないメカのような感受性に成り果てていたが。

・ビールと唐揚げ君でエネルギーチャージした。自宅がほんとうに好きです。温かいシャワーを浴びるために生きてるといっても過言ではない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?