見出し画像

日本工芸の過去現在未来

2023年10月某日
超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA
三井記念美術館


三井記念美術館の超絶技巧シリーズ第3弾。
第1弾は明治工芸をフィーチャーしたものだった。
いや~びっくりしたな~まさに超絶な技がてんこ盛りで。
第2弾からは現代作家の作品との競演になっていて、ワクワクが増している気がする。
今回も見ごたえたっぷりだぜ。


▼現代作家

【木彫】福田亨「吸水」
木の上の水滴を吸う揚羽蝶。
アゲハの羽の色は無着色。木そのものの色なんだって。ほえ~
さらに蝶の繊細さと台座の水滴の表現、ダブルで驚く。

どこもかしこもすべてが木


【漆工】池田晃将「百千金字塔香合」
マトリックスな雰囲気の螺鈿細工。貝をデジタル風な0から9の数字に切り出して、三角錐の香合にびっしりと貼りつけている。古典的な技術を用いながら、未来感に満ちているのがおもしろ。この展覧会のコンセプトにどんぴしゃな作品かと。


【陶磁】稲崎栄利子「Amrita」
陶器のレース?!
ものすごく細かいパーツを焼いて、それをつなぎ合わせてレースみたいなしなやかな作品に仕立てている。
って説明を聞いても「ホンマかいな!どないなってるねん!」って思っちゃう。
オリジナリティ炸裂。そして不思議な形。
触りたいな~と思うのは私だけじゃあないはず。
触るとそのすごさがもっと感じられるんだろうな~

しゃらしゃらと心地よい音がしそう


【木彫】大竹亮峯「眼鏡饅頭蟹」
自在なメガネカラッパ!足などのパーツが可動する。
丸まってるのをこう、グイっと開いて見てみたい。
この蟹をモチーフに選んだ時点でやったぜって感じ?

【木彫】大竹亮峯「月光」
月下美人の花の47枚の花弁は鹿角でできているとのこと。
って聞いても「ホンマかいな!どないなってるねん!」って思っちゃうふたたび。
水を注ぐと徐々に花が開いていく。
展示状態では見られないけど、映像では見られる。

空間を支配する存在感


【金工】長谷川清吉「真鍮製 爪楊枝」「銀製 梱包材」 
やたらゴージャスな日用品。
銀や銅や真鍮で、さもないものを正確に作り出すっていうギャップがおもしろ。

キラッキラまばゆい爪楊枝


【木彫】前原冬樹「《一刻》スルメに茶碗」
一木造(いちぼくづくり)つまり一本の木から掘り出している。
するめの足がぐりんとなってるところは一方方向からしかノミが入らないから、その場所を彫る専用のノミをその都度作って彫るんだそう。

スルメのドライ感


【金工】吉田泰一郎「夜霧の犬」
デカくて強そうな犬が花や葉っぱや蝶のモチーフをまとっていて、ピースフルな雰囲気。
あーポケモン×工芸展でイーブイ作った人だったんだ。なるほど~

かっこよ。


【ガラス】青木美歌「あなたと私の間に」
粘菌のような細胞のようなガラス。
バーナーでガラスを溶かしながら形づくったらしい。
とても有機的な、まさに粘菌のように自らの意志で動いて成長しているかのような物体に。
真っ暗な空間で、ミニマムな光に照らされた作品は幻想的な雰囲気。

上へも下へも


▼明治工芸

【七宝】並河靖之 香合・花瓶など
第1弾を見たときに好きになった。
技もさることながら、色の組み合わせが素敵。心躍る色合いというか。
京都を旅した折には、記念館を訪れた。
七宝のあれこれが盛りだくさん。
そして植治こと小川治兵衛が作った庭が良い。おすすめ。

・安藤緑山
たけのこ 柿
この人も第1弾を見たときにびっくりしたなあ。
象牙であんなおいしそうな柿とか筍を作るって!
目の前で見ても「これホントに象牙なん?」って思っちゃう

・米原雲海
味わい深い人物を掘り出す
竹取翁…かぐや姫を見つけて、すっごく嬉しそうなハイテンション翁。
月…削ぎ落した表現。でもふんわりした雰囲気。月を仰ぎ見ることで月を感じさせる。


現代作家と明治工芸がバチバチ。ってわけではなく、響きあっているような。
明治から伝わる技巧を踏まえつつ、現代ならではのセンスをちりばめて進化する工芸を堪能したのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?