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鉱石ラジオ① —はじめのゲルマニウムラジオ


はじめに


今回は、私が制作したゲルマニウムラジオについて書こうと思います。

夏休み前に大学の図書室で電子工作の本を漁っていると、本の中に「近年鉱石ラジオ制作の再ブームが到来している」などと書いてありました。
「鉱石ラジオ」。見慣れない単語でしたが、電子工作と絵画の原料としての鉱物、音(振動)に興味を持っている私にとってこの上なく魅力的なものに思われました。

そして「再ブーム」と言われるだけあって、私の親世代には馴染み深い工作であったようです。なんでも、電池や電力供給なくしてラジオが聞けるといいます。
しかし本当の鉱石ラジオには黄鉄鉱などの鉱石が必要らしく、制作に自信が持てません。そこでまずはゲルマニウムラジオを作ることに決めました。

ゲルマニウムラジオとは、簡単にいうと鉱石ラジオの鉱石が担う部分をゲルマニウムダイオードという小さな電子部品で置き換えたラジオだそうです。

材料を秋葉原と100円ショップで買い揃え、なんと一晩の制作でラジオを聞くことができました。もっと苦戦している方もおられるようで、私は電波状況と運が良かったのだと思います…



材料


私はこの材料でつくりました。

  • 大きめのダンボール

  • 0.35mm のエナメル線 50メートル

  • ゲルマニウムダイオード 

  • セラミックイヤフォン

  • 土台となる木材(なくても大丈夫です。)

  • 紙やすり

はじめの写真にはバリコンが映っていますが、なくても聞こえます。

作り方


1. アンテナコイル作り

まず、大きめのダンボールにエナメル線をまいていきます。
両端10センチほどを残して、はじめと終わりをテープで止めてまきます。なるべく間隔を詰めてひたすらグルグルの巻くのは多少の根気はいりますが、慣れてくると楽しいです。

不恰好なコイル



世界初!猫コイル

2.パーツをくっつける


10センチほどのエナメル線の両端を紙ヤスリで削って、片方をダイオードの片側に巻きつけ、もう片方はそのままイヤフォンに巻きつけます。
そしてダイオードの反対側にイヤフォンを巻き付けます。


指と比べると、部品がすごく小さい!

これだけで完成です!(私は受信できました。)
本やウェブサイトには、ラジオを作る時に重要なのはアースをとることと、アンテナ線を伸ばすことだと書いているのですが、この1番シンプルなラジオはそういった努力なしに聞くことができました。何故でしょうか?

アンテナ線がなくていいのはコイルが大きく巻かれていてアンテナコイルになっているためですが、
ネットで調べると、ゲルマニウムラジオの場合では 意図的にアースを作らなくても、回路と人体や床がコンデンサを形成し、高周波にとってはアースの代わりがあると書いてありました。

確かに、ゲルマニウムダイオードとエナメル線を巻き合わせている部分を指でギュッと抑えるとその間だけ音量が上がって聞きやすくなっていました。
あれは私の人体がアース化していた瞬間だったのだと、聞こえてから気がつきました。

ラジオ制作に詳しい方なら頭を抱えられるに違いない、行き当たりばったりすぎる制作でしたが、いくら解説本を読んでも実際にやらないと上達しないという点では絵も電子工作も同じではないでしょうか。
体験してみることで、紙の上の知識が消えないものとして会得されるのかもしれません。

聞こえたもの


おそるおそるイヤフォンを耳に当ててみると、わずかな音量で何か聞こえてきました。はじめは私の幻聴かと疑いましたが、玄関近くの扉の前に移動して聞いてみると、確かにパンクロックのような洋楽が聞こえてきます。
その後、女性のインタビュアーに男性が答える英語が聞こえてきました。アーティストトークをしています。
どうやら曲だけではなく、ラジオ全体が英語で放送されているようです。

しかし、東京で流れる全編英語の音楽番組があるのでしょうか?
英語勉強のためのラジオという訳でも無さそうな雰囲気です。

お世話になった秋葉原の電気屋の店主さんに伺うと、聞こえた放送は
ANF(American Forces Network)であるとのことです。
調べてみると
アメリカ軍が海外に駐留または配属されている人々に提供している政府のテレビ・ラジオサービスである。
とのこと(Wikipedia より)
不勉強な私は存在すら知らなかった放送ですが、毎日24時間放送されているようで、家でセラミックイヤフォンを耳にあてると洋楽が聞こえてくるというの趣きがありますね。

私は一応、手作りラジオで受信に成功することができました。
しかしこれによって完全に仕組みが理解できたわけではないので、これからも制作しながら知識を深めていきたいと思います。
みなさんも案ずるより産むが易しと言いますから、是非材料を揃えて、どんな電波が部屋に流れているかを体感してみられると楽しいと思います。


参考


最後に、制作する際に参考にさせて頂いた本やサイト、動画をご紹介します。

1 小林健二 著 『ぼくらの鉱石ラジオ』


…アーティストの小林健二さんが記したラジオ制作に必要な知識が詰まった一冊です。

美しい装丁の本です



↓こちらのウェブサイトからも見ることができます。

2   シャンテック電子 ゲルマニウムラジオの制作例

↓こちらのウェブサイトも大変参考になりました。

3 how to build a crystal radio 

 ↓ChromeにDeepL翻訳機能を追加すれば、ストレスなく海外のサイトを利用することができます。


4 身近な科楽シリーズ

↓でんじろう先生が回路図の説明をされています。



以上です。お読みいただきありがとうございました。

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