AI:VUCA時代に求められる能力とは

要旨

  • 答えのない時代から、秒で答えを得られる時代へ

  • 正しい問いを立てる力 読み解く力

  • AIが参照する情報の性質を理解すべし

  • 切り抜き世代の弊害 バズワードの出元は逆の意図の場合あり

  • 答えはすぐに得られるが頻繁に変わる

  • 理不尽を正そうとするな 耐えて待て

  • 啓蒙宣教師型か、社内営業マンか


答えのない時代から、秒で答えを得られる時代へ

 なんと、答えのない時代はAIの登場により答えを秒速で得られる時代になってしまった。ただし、技術の進歩が更なる進歩を加速するスパイラルにより、環境変数の変化に応じてその時点での正解が頻繁に変化する時代ではある。
 凶悪な新種のウイルスを2年で制圧できる時代に「答えがない」と感じる人が求める「答え」とは、以下のようなイメージではないか。

  • 唯一の正解がある

  • 普遍的な正解である

  • 一定の公式で正解を導ける

  • 与えられた選択肢に必ず正解が含まれる

 つまり、料理の塩加減のように「濃すぎても薄すぎてもダメだけど、多少の誤差は好みの問題」のような性質の命題は答えがないと感じてしまう。また、騙されて買った割高不動産物件の手仕舞いのように、「実行可能などの手段でも損失が出るが、損失を最小限にする手段は明らか」かつ「自分なりの答えが正解であったか否かを確かめる手段がない」「自分の選択が正解であったかはやってみるまで判明しない」という状況もまた「答えがない」になってしまう。
 ここで問題なのは「答え」という概念の観念論的定義ではない。上記のシチュエーションで答えがないと感じる人は何も決断できず同じ失敗を長年繰り返すのだ。再度強調するが、今は歴史上かつてない「簡単に答えを得られる時代」である。

正しい問いを立てる力 読み解く力

 前項ではあえて「誰でも答えを得られる」という表現を避けた。AIを使えば答えは一瞬で導けるが、それはあくまで「先行事例が存在し」「ネット上に情報が出ており」「正しいプロンプトが入力された場合」である。
 未知、未検証の事柄は地道に確かめるしかない。AIの腹に収まっていない答えは得られない。AIへの指示が悪いと正しい答えは得られない。
 今の時代、答えを出すのは難しくない。大切なのは出力された答えを正しく読み解く力である。正解を導ける人からしたら、分かりきった正解に人の理解が追いつくのは非常に緩慢である。

AIが参照する情報の性質を理解すべし

 AIが参照するのはネット上の情報と、開発者が教え込んだ情報である。世の中にはネット上に正解のあること、不正解が多数派の支持を得ていること、発信者は正しい説明をしているが世の中で正しく理解されていないこと、発信者が耳目を集めるために故意に誤解を招く表現をしていることが存在し、AIはそれらを良くも悪くも多数決的に字面通りの理解をしている。

切り抜き世代の弊害 バズワードの出元は逆の意図の場合あり

 ここ数年、ネット上で著名人が釣りをするようになった。魚釣りではない。インプレッションを伸ばすために餌となるような煽り文句をバズワードとしてばら撒き、実は趣意はそうではないと主張することが頻繁に見られる。
 脱民主主義、人生は遺伝で決まる、などがそれに近い。いずれも発信者の著書を読めば「そうは言っていない」のである。しかし、紙面にしか存在しない情報はAIの腹に収まらない。

答えはすぐに得られるが頻繁に変わる

 これはシンプルで、目的が変わったら正解も変わる。企業においては事業の成長フェーズが変わり中期目標が変わっても、KPI/KGI/KSFの定義に反映されないことがある。ミドルマネジメントに問いを立てる力が不足しているケースだ。目的が変わったら目標の定義や測り方を再設計、せめて点検すべきである。しかし、世の中では間違ったKPIを追いかけていることは非常に多い。
 未知未検証の事柄は事前に選択しうる最善手と思われる解が重大な不正解となる場合がある。想定と実情が異なれば速やかに気づく必要があるのは言わずもがな。その場合、答えは変えるべきである。
 環境が変われば正解も変わる。PEST分析に影響するような変化があれば特に。

理不尽を正そうとするな 耐えて待て

 そんなわけで、リテラシーのある人にとっては非常に正解を得やすい時代になった。一方でリテラシーのない人は、ある人から見たら明らかすぎる間違いを長年繰り返す。特に組織の上部がそのような時、現場ではできる人ほどストレスが大きいはずだ。
 組織が変わるにはトップとその側近が変わる必要がある。そうでなければ何度問題を解決しても同じ問題が再発する。
 現場で頼られるプレーヤーが嫌になって辞めても、意外と事業への影響は軽微である。その上、安易な転職はその人のキャリアを傷つける。社内営業で人事が決まるのは日本全体の風土であるから、合理的な意思決定がなされる組織は殆ど存在しないと言っても過言ではない。
 結局、ぱっと見て自明な簡単な問題を解決できずにこじらせ続ける様を無理に変えようとするのは、自分が損をするだけである。5年、10年は緩慢な進歩を見守るくらいの器を持ちたい。

啓蒙宣教師型か、社内営業マンか

 正解を持つ人はどうすればよいか。損をしない立ち回りが2つある。啓蒙宣教師型と社内営業マンである。
 前者は支持者を増やす活動だ。組織が変わるとしたら、答えを正しく理解する人が圧倒的な多数派になり、その正解が上層の耳に伝わり、正解を採用することが上層の点数に繋がる時だ。正しいことの正しい理解を広めればいずれ少しずつ良くなると信じよう。実際、効果はある。
 社内営業マンは説明不要だろう。点数稼ぎ、上司に気に入られること以外は一切何も気にしないことだ。

 総括すると、答えを出すのは非常に簡単であるが、答えを広めるには日本の企業風土では分かりきった不正解が繰り返される様を笑顔で5年10年見守って待つ忍耐力が必要である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?