(舞台感想)野田地図 兎、波を走る
ご縁をいただき、2回観ました。
1回目の観劇。
冒頭でラチとわかりました。
しかし脱兎が何者なのか(コウサクインということ以外)実名を聞いても思い出せず、半分以上、意味不明のまま観続けました。
2回目はいろいろ調べたので理解しました。しかしここまでわからないのであれば、劇団非推奨でも、ネタバレを確認して準備してから見たほうが良かったかもしれません。
脱兎の高橋一生さんは、軽やかに走っていると思うと途中から変容し、震撼とさせられました。空気がヒヤリと変わり、はっとしました。
38度線では悲愴がオーラのように立ちのぼって見え、悲しくてボロボロ泣いてしまいました。
超シリアス劇で拝見したい。
秋山菜津子さんは上手くて存在感が抜群でした。
話が輻輳する中、桜の園はさすがに骨格がしっかりしていてわかりやすかった。
元女優が仮想現実に行ってしまうのは自分のことだと思いました。
大勢に流されず、自分の頭で考えなければ。何が起こっているのか見極めなければ。
演者の皆様の気迫、演出、音楽、衣装、全て素晴らしかったです。
しかし、腑に落ちないと思いました。
自分の理解していない、別のテーマがあるのだろうかと本気で思いました。
違和感のもとは、想起されるある国についての描写です。
直球で叩いているように見えました。制作者の意図はわかりませんが、相対的にニホンは正義と言っているようで、ニホンが行った民族差別や非人道を考えると、こんな一方的な表現で大丈夫なのだろうかと心配になりました。
自分たちは被害者なのだから、相手国を叩いて当然と、客席が皆思っているようで怖かったです。
私は関西人なので、劇中の「イタミ」は伊丹空港の地区を指していて意味があると思いました。しかし後になって、そんなことは誰も言っておらず、単なる言葉遊びだったのか今でも分かりません。
見終わってからも長く、色々考えさせられました。
お読みいただき、ありがとうございました。
●データ
公演期間
2023/6/17(土) 〜2023/8/27(日)
会場
東京芸術劇場 プレイハウス (東京都)
新歌舞伎座 (大阪府)
博多座 (福岡県)
作・演出=野田秀樹
美術=堀尾幸男
照明=服部基
衣裳=ひびのこづえ
音楽=原摩利彦
音響=藤本純子
振付=井手茂太
ヘアメイク=赤松絵利
人形=沢則行
映像=上田大樹
舞台監督=瀬﨑将孝
出演=高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一、野田秀樹 他