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何を今更・・・2

元ブログより、ガラケーからスマホに変えた時の騒ぎの続きです。

・・・・・・・・・・・

いちいち
「昔は…」
なんて言うといかにも年寄り臭くて自分でも嫌なのだが、今の仕事は大変だとつくづく思う。
楽になったようでも楽ではない。
昔はその道ひとすじで、その道のプロがいた。
技術職なんてのは
「国宝」
にまで昇華したりする。
企業にしても、貯金は銀行
手紙は郵便局

子供でも分かりやすかった。

しかし例えば銀行であるが、お金の出し入れ、融資ナンタラ、その辺はわかる。が、ある時から
「証券取引」
「保険の取り扱い」
なんてことまで科された。私のように凝り固まった人間だと
「えー、銀行で保険? はぁ? ペット保険まで扱ってるの?」
となる。私自身も銀行で働いていたので、次々課されるアレコレに戸惑うことが続いた。

嫁のYちゃんは事務職だが、息子とは同じ会社の別の支店勤務である。
が、なぜか某通信会社の取り扱い代理店になっていて、

「たまに・・・その手のキャンペーンがあるんです」

息子は営業なのでこれまで二度ほど、そのキャンペーンの時に、会って口で言えばいいのに、電話を寄越したことがある。

「なるほど、これは社内で周囲へ対してのテレマしてますアピールだな」

と納得したものだ。

親としたら何か役に立ちたい気もするが、私はそんな甘やかしではないので、奴の期待に添うことは無く、奴も期待などしていないのであった。
が、このところの
「脅しの封書」
のこともあり、いずれ時が来たら決めねばならぬのか、と暗澹たる気持ちであった。その時は、息子に言えばいいのかもしれないが、私とて働いてきた身、あの手の事務手続きの煩雑さを考えるとどっちにしても
「面倒だしなんか気の毒」
な気がするのであった。

息子は黙って聞いていたが
「Yちゃんに言うといいよ」
とだけ言った。で、何度かYちゃんに相談したが彼女もハギレが悪い。
そうこうしていた時に、
「今日家にいますか?」
と連絡が来たのであった。

私は用事で息子の家の近くまで行くのと
「せっかくの彼らの休日に、行ったり来たりでは気の毒だ」
と思い、
「これこれこういうわけだけど、ちょっとだけお邪魔して良い?」
「いいですよ、じゃ、お昼一緒に食べましょう」
優しい嫁が言ってくれたが彼らとは生活時間帯が大きく違い、朝5時半に朝食のため、私は昼は済みであった。まだ11時だったけど。

「じゃ、私たちも適当に家で済ませますから、用事終わったら来てください」
「はい、よろしく」

いそいそと支度をし出かけた。何をどうする気か全く決めていない。

「ガラケーが使えなくなることについて」
「たまたま11月が、2年縛りが解ける時期」
「夫の契約内容変更」

まあそんなことだが、とにかく
「話だけ」
のつもりであった。

おはぎ(彼らの飼い犬)は私の訪問に相変わらず、最大限の歓迎をしてくれ、それでも少しは賢くなったと見え、玄関内ではなく、外にいったん出てから身をよじっての喜びとともに、
「嬉ション」
をするのだった。
私はションをかわしながら、リビングに入る。

ウチも温かい家だと思うが、息子の家も温かい。
暖房は一台のエアコンだけである。日当たりが良いのもあるが、二人とも薄着である。
「外寒いよ」
「寒いですね」

なのに息子など
「なんでアンタは半袖なのよ」
するとYちゃんが
「これ見てください」
健康診断の結果だった。前年の夏、体調不良で入院した息子が、退院後の会社の健診では
「何だこの数値は」
だった。
昨年のだけでなく、入社以来のデータが並んでいるので比較できる。
Yちゃんが説明してくれる。
「あのあとストイックになって・・・」

息子は、何か顔を真っ赤にして何かを吹いている。
「何してんの?」
「肺活量を鍛えてるんです」
「へぇ・・・」
「食事制限とかしてるの?」
「お酒とたばこはすっかりやめて、でも、食事はふつうです。朝はお茶くらいですが」

私はこのところ、ストレッチをしている。
体が硬くてどうしようもなく、
「バレエストレッチ」
なるものをやるようになった。ある方の動画を見てのことだが、
「筋肉はいくつになっても鍛えられます」
という言葉に励まされ、取り敢えず、体をほぐす一つの方法をやってみたら、突然膝伸ばしの前屈をして床に手がペタンと付いたのには驚いた。

「私はそういう鍛える系ではないけど、最近やってる」
と息子に対抗しはじめる。

「ほらほらほら、見てー」

幼児が大人の気を引くかのようだと、ちょっと恥ずかしいが、Yちゃんが
「うっ・・・すごい!! 私より柔らかい」
「最終目標は、完璧な開脚なのよ」
どうも、息子のすることとはズレているようだ。それにしても息子は見た目がすっかり変わっていた。
学生の頃はずっとハンドボールをやっていて、大喰らいでも一度も太ったことは無かったが、大学を出て就職して以来職場で飲み会が多く、不摂生もあり体形が崩れた。一番太っていたのは、前年の入院前で、20代のくせに、明らかにお酒と不摂生でこうなりました、という状況であった。診断結果を見ても、特にある肝機能の数値が高く
「こりゃ私と同じだな」
今年の結果はすっかり正常値になっていて
「所見なし」
で褒められてもいた
「確かに顔はスッキリ、ぽよーんとしてないし、ちょっと、腹筋とか割れたの?」
Tシャツをまくって見せるのかと思ったら、上を全部脱いで
「げっ・・・・ 別人」

割れた腹筋と、盛り上がった胸筋。
「これ、毎日やるといいよ」
と、スクワットをして見せるではないか。
「その位、出来ます」
すぐムキになる私、負けじと真似するが
「ウッ・・・キッツイ・・・」
5回やっただけで汗が出た。このところのストレッチでだいぶ体が柔らかくなっていたが、その晩、背筋や腿が筋肉痛になった。
つまりは
「痛くないという事は効いていないこと」
スマホだけでなく、私には課題が山積しているようだ。

普段は人の話に首を突っ込むことがない息子が、聞いてきた。
「結局、月々いくらかかってんの?」
「このくらい」
「高い、そんなに使ってんの?」
説明すると
「あのね、契約とか機種はとにかくマメにチェックするなり見直すべきなんだよ」
「だって、ずっとこの金額とか言うよ」
「〇〇なんか、安く見せるの上手いけど、実は違うんだよ」
「だってアンタタチも使ってるじゃん」
「俺は換えたよ。今は月額〇〇〇だよ」
「はあ?」
「他社に換えるって言うと、まず死ぬほど引き留められるけどね、あれやこれや割引だとか、今ならこうだ、とか。それでもやめると言うと、こちらでの手数料の他に他社でも手数料がかかるからって脅す。大体の人が、その目の前のことに捉われてしまって、結局月々損してるのさ」
「・・・」
Yちゃんと私は黙ってしまった。

「目先のことに頭が行って、気が付くと『三か月だけ無料」なんてのが過ぎてしまって、でも、何のことか忘れてるのさ。でも、改めて手数料とかかかるとか、ショップに行くのを億劫がるでしょ、で、ズルズルと払い続けて、年にたとえればこのくらい…無駄でしょ」
「たっ・・・確かに・・・」
「ネットやカードで買い物するの?」
「私は猫の餌くらいだけど、夫は仕事で使うのは、大概ネットで買う」
「カードって年会費かかる?」
「どこのカード?」

私は、職場で作ったカードをずっと使っている。

「年会費かかるよ」
「ポイントはどうなってるの?」
「溜まってるみたいだけど、殆ど買い物しないし、期限があって、ポイント交換しようにもなんかハードル高いものばっかりのカタログが届くけど、交換したことは無いよ」
「なんたら・・・」

息子は気の毒そうに私を見る。息子は年会費無料のカードを作り、それで買い物をし、ナントカとナントカのポイントがたまり、
「それが結構貯まって、結構使えるんですよ、びっくりしました」
家計を取り仕切るYちゃんが言うから本当なんだな。
私は以前職場で、カードの年会費がずっと滞納されたまま溜まっている顧客がいて、使用履歴を調べると買い物は全くしていなくて年会費だけが蓄積されているのが問題になっているのを聞いたことがある。

「滞納でカードは使えなくなってるけど、本人が解約を言ってこないし清算しないから今後も溜まり続け・・・今は個人情報とか、手続きが面倒になってるから、そのまま放置され本人も知らない。
住所が変わったりしてもカード会社や銀行には届け出しなかったりする人も多いから、督促出しても戻ってくる。もしその人が死んでも家族は知らないままそういう死蔵カードが増える一方・・・」

「怖いねぇ、嫌だねぇ、知らないところで債務が増えていくんだねぇ」
と同僚とうなずき合ったことを思い出す。

その後もあれやこれやと息子から聴取され、答え、そうしているときに夫から
「今日はもう終わったから帰るよ」
と連絡が来、ああだこうだと話すと、結局夫も息子の家に来た。
夫のガラホで、月々何ギガだか、なんだかの使用量が見られる(それも知らない)が、見方を教えられて夫が示すと、息子が大笑いした。
「少なっ!!!」
そして
「契約範囲内どころか、ほとんど使ってないようなもの。普段何につなぎます?」
「天気予報見たり、道路状況見たり・・・ あと、時々動画見たり・・・」「Wi-Fi家にあるでしょ? 家で使う分にはかからないから、やっぱりどこか最初の契約の一年無料とか、何か月無料とか、何とか割引が全部期限切れになって、どんと請求が来るようになったんだね。最初の話で聞いた額だけ頭にあるんだよ、大概の人が。そういうカラクリが多いんです」

息子はどこの営業マンだっけ? 夫もYちゃんも、妙に納得した顔になっていく。私はポカーンとするばかり。

「でもさ、Yちゃんだって店でお客さんに聞かれたり、契約したりあるんでしょ?」
「うーん・・・たまに・・・ほとんどないです」

そりゃそうだ、本業と違うし。

「例えば契約とると、何か報奨金とか出るの?」
「年に何件とか取れば、ですけど、1000円ももらえないですよ」
「なんだ、そんなだったらやる気出ないね」
「実際、本業以外の事務が面倒なだけなんです、正直な話」
「アンタたちの会社が代理店だから、せめて…と思ったんだけど」

息子は
「あー、そういう気づかいは全然要らないよ」

いかに私たちが、通信費に無駄にお金をかけてしまっているか、また縷々説明され
「俺も話聞くから、みんなで一緒に行こう」
ということになり、話途中であれこれ不安になりつつも、損をしているという事が特に気になる我ら夫婦は、若夫婦に促され某家電ショップに向かったのであった。

つづく

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