見出し画像

精神科のお薬の全体像を解説します。

こんにちは。
都市型地域医療研究所の小原です。
今回は私と芳賀先生が所属する【訪問診療】ホウカンTOKYOクリニックで診ている患者さんが多く使用している、精神科の薬について解説していきたいと思います。(芳賀先生は精神科の専門医です)


精神科で使う薬の種類

精神科で使う薬は向精神薬といいます。精神に向かう薬と書いて向精神薬といい、様々な薬がありますが概ね6系統に分かれます。

①抗精神病薬
②抗うつ薬
③抗不安薬
④睡眠薬
⑤気分安定薬
⑥抗てんかん薬

向精神薬を使う時

対症療法というときに使い、症状を抑えるものです。根本的に原因を改善する薬ではありません。

対症療法とは??

病気の原因があって疾患があります。そして症状が出てきます。
例えば…肺がんの原因は『たばこを吸う』です。肺がんになると、症状として『咳が出る、痰が出る、熱が出る、体重が減ってくる、だるくなる』
咳が出る⇒咳止めを使う
痰が出る⇒痰切りを使う
体重が減少してくる⇒栄養補助剤を使うという『対症療法』があります。
また、『原因療法』とは肺がんを小さくする『抗がん剤』となります。

本当は原因療法が望ましいのですが、精神科のお薬の場合は症状を取るような対症療法しかないのです。

なんで対症療法になるの??

精神科で使用する薬は
①疾患の原因が分からない
②絶対的な診断基準というものがない
症状で患者さんをグループ分けしています。例えば…妄想・幻覚がある場合は精神病や統合失調症とする、意欲が低下していて気持ちが落ち込んでいたらうつ病とするといったように分けています。
③絶対的な診断方法がない
採血結果等の検査での判断できないため、症状と経過をみながら医師が診断して治療をしていきます。

患者さんは自身の内服している向精神薬について理解していた方がいい??

⇒理解することをお勧めします、では理解していいことは??

①疾患がわかるというよりは症状が分かる
⇒例えば…抗精神病薬を投与していたら、もしかしたら神経が興奮しているのかもしない、抗うつ薬を使っていたら、うつがあるんじゃないか、睡眠薬を処方されていたら眠れない症状に医師が注目して治療を行っていることがわかります。
②症状に応じて向精神薬を調整している経過が分かる
⇒例えば…抗精神病薬を増薬しようとなった場合、神経が興奮している状態であるから医師はその興奮した状態を少し抑えたいと考えているのだろう治療の経過を追うことができます。

①抗精神病薬

神経細胞のドパミンを抑えるために投与しています。ドパミン仮説といって、妄想や幻覚という症状が出る場合に神経細胞にドパミンが作用しすぎれいるからなるんじゃないかと仮説を立てています。
結果として、幻覚・妄想・易怒性・怒りっぽさ・不眠が改善していきます。
抗精神薬は対症療法であり、根本的に原因を改善する治療法ではないので、幻覚・妄想・易怒性・不眠がある患者さんには試してみる価値がある薬です。

②抗うつ薬

うつ病のための治療薬ではありません。
神経細胞は1本の神経細胞が長くつながっているわけではなく、神経細胞を電車のように乗り継ぎながら、伝えていきます。刺激を神経細胞から次の神経細胞につなぎます。伝える役割を担う物質がセロトニン・ノルアドレナリンという物質になります。セロトニン・ノルアドレナリンを神経細胞は刺激が伝えると吸収していまいますが、その吸収を妨害することによりセロトニン・ノルアドレナリンを増やす薬が抗うつ薬となります。抗うつ薬を使用すると、神経細胞の耐性が増します。結果としてうつや強迫症状、何かをしないといけない、何かにとらわれているこういったことが緩和します。
抗うつ薬というのはうつ病の方だけでなく、意欲が落ち込んでいる・気持ちが落ちている・1つのことにすごくこだわりすぎているそういった方には試してみる価値がある薬です。

③抗不安薬・④睡眠薬

この2つは同じ薬です。医師や患者さんが使用する目的において言い方を分けています。
抗不安薬・睡眠薬は神経細胞のGABA受容体というものに作用します。GABA受容体というのは抑制系の受容体と言われまして、作用すると神経細胞が抑制されます。そのため、神経細胞の興奮が抑えられます。神経細胞の興奮が抑えられると、不安・焦燥・焦りが緩和し、眠くなります。不安があったり、焦りがあったり、眠れないという方に使用する価値のある薬になります。
【注意事項】ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は離脱症状・耐性・依存といった症状が出ます。
離脱症状:薬をやめたときに不快な症状がでます、やめるときは徐々に徐々にやめていくといいのですが、スパッとやめてしまうと離脱症状がでます。離脱症状とは、手が震えたり・汗がドバっと出たり・イライラしたり、カーっと体が熱くなったりといった不快な症状が出ます。
耐性:同じ薬をずっと使っているとだんだん効きが悪くなってきます。効きが悪いので同じ効果を期待すると、どんどん薬の量が増えてしまいます。
依存:薬がないと生きていけない、薬にどんどん頼っていってしまう症状をいいます。

⑤気分安定薬・⑥抗てんかん薬

気分安定薬と抗てんかん薬は同じ薬です。医師と患者さんが目的に応じて呼び方を変えています。
興奮を司るグルタミン神経や抑制系のGABA神経といった神経に多面的に効きます。様々な経路で神経細胞の興奮を抑える薬です。痙攣を抑えたり、気持ちの波を抑えることに使用します。
例えば…気分の波がある場合、怒りっぽさや衝動性がある場合に使用することができます。

向精神薬はあくまで、対処療法であり出てきた症状に対して使うものです。しかし、しっかり把握しておくと主治医がどの症状にターゲットをあてて治療しているかが良くわかると思います。

本日は精神科のお薬の全体像について解説致しました。
次回以降の記事では精神科のお薬の詳細について解説して参ります。
どうぞ、よろしくおねがいいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?