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【事例紹介】訪問診療を終診し、地域の医院へ受診切替を行った事例

こんにちは。都市型地域医療研究所の小原です。

2024年も地域医療に貢献できるよう頑張っていきたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。

今回はホウカンTOKYOクリニックで対応した事例についてご紹介いたします。今回は医療の導入時期は訪問診療にてホウカンTOKYOクリニックにて診察、その後サービス関係者との協力により地域の医院(近医)への受診に変更していった事例をご紹介します。
皆様もご一読いただきましたら、感想等をコメント頂けますと明日への活力となります。

80 歳女性
 診断:認知症
主訴:やせてきてしまっている
既往歴:骨粗しょう症
嗜好歴:喫煙歴なし、飲酒歴なし

【生活歴】
長野県出身、同胞5 名中第3 子。上京し、長らく寮母として稼働していたが、高齢となってからは清掃業に従事し、4 年前まで稼働していた。2 度の婚姻歴があるが、夫は他界。挙児無し。独居。
要支援2 でデイサービスを週に2 回利用していた。
要支援2 となったのは、体重が40㎏弱とフレイルが目立ち、近所の親切な方の支援を受けないと、完全な独居は難しいことが理由である。一方で近所の親切な方は本人に金の無心をしており、完全に信頼のおける支援者というわけではなかった(後から分かったこと)。

【現病歴】
近隣の医院に長らく通っており、骨粗しょう症で投薬を受けていた。当院に相談の半年前から認知機能低下が目立つようになり、近隣の医院の主治医も話がかみ合わない、と感じていた。要支援2 で地域包括支援センターが関わり、2 年ほど前からデイサービスを週に2 回利用しているほか、ヘルパーも利用していたが、当院相談の2か月前になるとヘルパーの支援を断るようになり、デイサービス以外では近所のご友人が食事を運んでいた。当院相談の1か月前からは親切な方の介入も拒否、地域包括支援センターからの依頼で当院の訪問診療を導入した。

【現症】
医師、事務員、地域包括支援センター職員、本人で診察。小柄な老年女性。体重30㎏台前半でるい痩が目立つ。もともと近所で支援していた方が、家のものをもっていってしまう、大家さんがゴミを置いていくと険しい表情で話す。認知機能はHDS R は失見当でマイナス2 点、計算マイナス4 点、遅延再生、物品想起、流暢性でマイナス3 点。20 点。軽症の認知症であるが、妄想の方が問題。
家にはあまり人は入ってほしくない、とのことであったが、訪問診療の同意はえられ、翌週の診察では全身状態の評価のために採血を行うこととして初回訪問を終えた。耐糖能異常のリスクがなければ抗精神病薬を中心とした薬物療法を導入する方針とした。

【診断と根拠】
もともと近所で支援していたご友人が、家のものをもっていってしまう、大家さんがゴミを置いていく、と話すことから、軽度の認知症が基礎疾患として存在しているが、妄想が前景化していると診断した。

【経過】

*7 日後再診*
完全に居留守。熱中症のリスクも高く、安否確認の意味も含めて大家さんに相談し、大家さん同席の上で安否確認を行ったが、激しい拒否。

*14 日後再診*
前回と同じような状況であった。

*21 日後再診*
デイサービスには来ている、という情報から、デイサービスを訪問。医師とは目を合わそうともしないが、興奮することも無く、デイサービスのプログラムを行っていた。
体重は当院相談の3 か月前にデイサービスで図った際に体重37.2kg 、その後当院相談の2か月前は34.9kg、当院相談の月は30.2 ㎏ とるい痩が著明となってきていた。デイサービスの週に2 回の食事以外にはカロリー摂取ができておらず、健康状態を著しく損ねていた。自宅でのサービス導入がままならず、全身状態を鑑みて本人の同意に寄らない非同意入院を検討、長野に在住の本人の同胞(姉)と連絡を取り、非同意入院の際には同意者となっていただくことを確認した。

*28 日後再診*
デイサービス訪問、デイサービス管理者と面談、本人の状態を共有。非同意入院を検討する際にはデイサービスからの病院受診を検討することに同意を得た。その後、デイサービスのスタッフの協力あり、本人がデイサービスに毎日通所、内服介助も可能であることを提案頂いた。また、デイサービスのスタッフより、るい痩に対しては健康診断と言うことで近医を受診させることも可能ですとの提案をうけた。

*35 日後再診*
診察時にメマリー、エビリファイを処方、デイサービスにて内服を開始することとする。
デイサービス職員が行政の健康診断のために近医を受診、近医が当院のすすめる向精神薬を処方も可能であると提案していただけているとデイサービス職員から情報提供を受けた。
即日近医と連絡をとり、近医としては内科医であり、抗精神病薬を自ら調整することは難しいが、当院と連携して薬剤を処方することは可能と、いっていただける。こちらとしては非同意入院を積極的に行いたい、という意思はなく連携して診療を行っていく方針とした。近医でメマリー、エビリファイを処方していただくこととする。

*42 日後*
近医と連絡をとり内服を5 日間ほど継続していること、デイサービスに連日通所することとなり、体重が33㎏ほど増加したこと。近隣医に受診できていることから、内科医から主治医権の移行を提案され、妄想性障害の増悪のリスクも懸念されたが、本人との現時点での意思疎通は近医と取りやすいこと、毎日関わるデイサービスのスタッフとの意思疎通も近医との方が取りやすいと思われたことから、当院は終診とした。

ホウカンTOKYOクリニックでは地域のサービス事業所の皆様や近隣医院の皆様と相談して患者様の診療に当たっていけるよう努力しております。今後とも地域医療の一助となっていきたいです。どうぞ、よろしくおねがいいたします。

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