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M-1グランプリ2020がすごくおもしろかった

2020のM-1も超面白かった。

前回のM-1後に感想を書いたら思いのほかいろんな人が連絡をくれたし、閲覧数もかなりあってびっくりしたしちょっと嬉しかった。でもさすがに長すぎたので、今回はもうすこしコンパクトにまとめようと思う。

コロナでえらいことになってしまった2020年、仕事もプライベートもガラッとやり方が変わった。できないことが増えた一方でやるべきことや考えるべきこともむしろ増えた。もともと自分はインドアなほうではあるけど、さすがに閉塞感はあった。
そんななか夏からリアルな会場で予選がスタートするM-1はどうなるのかとても心配だったけど、開催されて本当によかった!
通常1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝、決勝、の流れで行われるところ、1回予選を減らして3回戦がないかたちで予選があり、一部ビデオでの審査も行われたらしい。無観客ライブにしたり、パネルを立てたり、マイク消毒したりと厳戒態勢で行われたらしい。お客さんが少ない会場で、かつライブも少なく舞台に立つ機会が減った状態で本調子が出ない芸人さんも多かったと思うけど、それでもこれだけおもしろい大会になったのはマジでM-1すごいと思う。

予選

今年は、例年の風物詩だったGYAO!だけでなくYouTubeでも予選ネタが見られるようになって、準決勝は急遽有料配信が決定。僕は去年行ってたのしかった映画館LVに行きたかったけどどうしても今年行けなかったので、おかげで、全部見ることができたので助かった。

個人的に予選で超面白かったコンビは、
真空ジェシカ、カナメストーン、黒帯、デルマパンゲ、ツートライブ、キャタピラーズ、シシガシラ、ぎょうぶ、ブリキカラス、パンプキンポテトフライ、バトルスコーピオン、マユリカ、侍スライス、虹の黄昏、Dr.ハインリッヒ、準決勝進出者全員

ラストイヤーのハインリッヒと学天即、どっちもめちゃめちゃかっこよかったな。真空ジェシカ、キャタピラーズ、シシガシラ、マユリカ、ネタが完成度高くて気持ち良い。黒帯、デルマパンゲ、ツートライブ、パンプキンポテトフライ、侍スライスはセンスとパワーが大好き。こんなかっこいい脳みそに生まれたかったなとすごく思う。カナメストーンはぜんぶ完璧すぎる。マジで来年優勝してほしい。今年はライブでたくさん見たいな~見れるかな~。錦鯉、虹の黄昏、モグライダー、カナメストーンとかは、ライブで何度か見たことがあるけど毎回死ぬほどウケている。今年はもっとたくさん見たいな

敗者復活戦

ほんと全組面白くて、そのなかでも、ゆにばーす、金属バット、ダイタク、ニッポンの社長がすごかった。キュウとランジャタイはコメントが最高。こんど2マンライブやるらしい…見たい。
去年のM-1を経て今年ブレイクしたぺこぱはもう何も語ることないというか、あれだけ忙しい中で準決勝に残って敗者復活でも3番目に食い込んだことが驚き。
敗者復活2位のゆにばーすは、M-1キ○ガイの川瀬名人が敗者復活前から超面白かったので大注目だった。2019年、準々決勝で落ちてしまったゆにばーすはGYAO!の視聴者投票枠(準々決勝敗退者が1組だけ準決勝に復活できる枠)を狙って、出演ライブではQRコード付きのチラシを配り、SNSでは語尾に「GYAO」と付けつつ大量の宣伝ツイートを行いとにかく目立っていた。たぶん良いところまで行っていたと思うんだけど、その枠は金属バットが獲得した(話逸れるけど金属は去年準決勝トップバッターで今年敗者復活トップバッター。去年はGYAO!枠だから仕方ないけど今年も敗者復活でトップ引いたのは逆くじ運みたいのすごいなと)。
そして2020年川瀬名人は準決勝で落ちてしまった後、敗者復活に向けてやっぱりブチ込んできた。
政見放送、選挙カーで渋谷を街宣、劇場に選挙ポスターの大量掲出という…もちろんここまでのことをやっている人は他にいない。
マジメに勝つことを突き詰めた結果、これだけふざけきってM-1のサイドコンテンツに仕上がっているのはとてつもないことで、実は僕は、川瀬名人のこういうところに憧れているし、心の底から超尊敬している。しかしそれでも1位には一歩及ばなかった。僕も勝手に悔しい。
僕にとってゆにばーす以外で特に印象的だったのは最下位のランジャタイ。これまた超個人的な理由で、M-1の1週間前、たまたま六本木を歩いているときになんとランジャタイのお二人と会ったのが大きい。僕は痛いお笑いファンなので、思わず話しかけてしまった。どうしようか迷った挙句、出てきた言葉が「M-1頑張ってください!」だった。既に準決勝で敗退していたので正確には「敗者復活頑張ってください!」と言うべきところ完全に間違えた。あまりにもデリカシーのない声がけだった。
でも、その瞬間ボケの国崎さんは満面の笑顔で「ねぇ、聞いてください!ぼくたち、M-1決勝進出したんですよ」とボケで返してくれた。さらに僕が間違えて「知ってます!」と言ってしまったところすかさずツッコミの伊藤さんが「いや、嘘です、嘘です」と言ってくれた。
ずっと国崎さんはニコニコ笑っていたけど、僕は脇を汗でビチャビチャにしながら「あー!すいません、あの、敗者復活、敗者復活頑張ってください」とギリギリ言って、それで別れた。
そんなこともあって、国民投票1位だったインディアンス田渕さんが「国民最高〜!」と言ったのに対して国崎さんが「国民最低〜!」と叫んでしっかり爪痕を残したのは興奮した。
時系列的に少し飛んでしまうけど、M-1後に無限大で行われたアフタートークショーになぜか決勝に出ていないランジャタイが呼ばれていて、そこのトークで、どの組よりもエピソードトークと会話の流れに乗せたボケで一番爆笑をとっていて超かっこよかった。ネタに比べて平場は打率も飛距離もあるヒットを飛ばしまくるアベレージヒッター型だったのが、あまりちゃんと追いかけられていなかった僕には嬉しい大発見だった。このM-1前後のこともあり、すっかりランジャタイが好きになってしまった。トークの配信もやっているようなので是非見ていきたい。

決勝

ネタももちろん全組面白くて超笑ったけど、今回は各組の歴史やストーリーに共感して感動できる大会だったと思う。あまり長くなってもアレなのでそこに絞る。
ニューヨークとインディアンスは去年の雪辱を晴らして、どっちも負けたのに清々しい感じだったのが印象的だった。ニューヨークはもう最近、ちょっとなんかカリスマというか、お笑い界自体に新しい流れを作っているところがある。M-1にフォーカスしすぎてないのも良い。M-1でのニューヨークじゃなく、ニューヨーク自身のこれからがずっと楽しみ。
おいでやすこがは、ネタでも触れてたけど突然R-1の出場規定が変わったことで二人とも今回出場できなくなってしまった、っていう背景が凄まじい。想像を絶する。特に小田さん。2016から2020年まで5年連続で、数千人のなかで10番以内に入る努力をして結果も残していたところ、突然「あ、今回あなた出場しちゃダメです」って言い渡される気持ちってどんななんだろう。
そんな状況からの、本業ではない「漫才」での準優勝。状況やネタが奇跡的な化学変化を起こした結果、変な話、「5年連続R-1決勝」以上のインパクトと知名度を手に入れたんじゃないかと思う。人生ってわからないな…いろんなチャンスに手を伸ばしてみるのってやっぱり大事だな。
錦鯉はなにも考えずに爆笑できて最高でしかなかった。年齢を重ねているとこんな重層的なコンテンツになるとは。錦鯉長谷川まさのりさんが40のときのHTBのドキュメンタリーと、今回のM-1アナザーストーリー(事後ドキュメント)両方を見ると、これもまた人生ってわかんないな、と感動するので見てない人はぜひ見てほしい。僕はどっちも泣いてしまった。北海道からはるばる東京出てきて芸人やるも数十年泣かず飛ばず。49にして「M-1決勝」っていう最高峰の舞台に立って、地元で居酒屋を営むお母さんに恩返しをする、っていう、これ誰でも泣くでしょ…それでいてネタがあれだけバカなのがグッとくる。

そして優勝したマヂカルラブリー。
準決勝でも吊り革のネタをやっていたんだけど、ブッチギリで面白くて腹抱えて笑った。決勝でも見るの2回目なのに超笑ってしまった
例にもれずマヂカルも、複層のストーリーがあって、僕が勝手に感情移入してしまう余白もたくさんあって、今回の優勝はたまらなかった。
野田さんは34だけど実は芸歴20年近い。「学校へ行こう!」の企画で登場して以降、15,6からプロの芸人になっている。だから中堅以上の芸人さんも野田さんのことを「野田さん」と呼んでいて不思議な感じ。16歳のときなんて僕はなにも考えてなかったけど、野田さんは当時から未来を見据えていた。その「将来」がいま来て、R-1とM-1で優勝してキングオブコントでも7位に入って。って、そんなことある??てかR-1、もし去年優勝してなかったら今年は芸歴の関係で野田さん出られなかったから一生優勝できなかったんだな…そういう運命的なものも「持ってる」気がする。そして、下の名前が僕と同じ「ひかる」で年齢も一緒。勝手に親近感もって感情移入しまくった。
村上さんは村上さんで、大学の先輩たちの友達だし、大学時代のネタも見たこともあるし(そのときもすごいウケていた)、あと、一度だけお話させていただいたこともあって、これまた勝手に僕の中でこっそり「近い人認定」しているので他人と思えず、優勝して信じられない顔をしているのを見てグッと来てしまった。


決勝後

M-1が終わってから、いろんな感想記事を見た。大会でも審査が割れたように、いろんな意見の人がいて今回本当に面白い。感想戦も楽しめるのが大型賞レースの醍醐味だなぁと思う。そういうのを見ていてすごく思うことがたくさんあった。

自分の中にどんな引き出しがあるか、その引き出しには何が詰まっているかで、エンタメは受け取れ方も自分にとっての価値も変わる。
特にお笑いは個々の主観による判断の集合がそのまま評価になるような演芸なので、自分の主観をあたかも世の中の総意かのように主語を大きくして論じるのはナンセンス。それぞれが自分のおもしろいと思ったことをおもしろいと信じて楽しめば良いし、人の価値観をわざわざ否定する必要もない。そしてそのストライクゾーンはなるべく広い方が人生は楽しい。この、ストライクゾーンが広くあること、もっといえば大半の人にとってボールでも自分にとってのストライクに持って来られるのが、引き出しの多さと内容によるところで、そんな状態でいられたら人生がすごく楽しくなると思う。引き出しは長い時間かけて作られていくものだし、意図的に組み上げられたものもあれば偶然そのように出来上がっていることもある。環境、運にも大きく左右されるけど、でもとにかく、自分なりの面白がれる角度を目いっぱいたくさん持てたほうが、人生は豊かになる。

なんのこっちゃ?という話を書いてしまったけど、要は、
「今回は前回よりレベル下がりましたねえ」みたいな浅い考察とか「漫才か漫才じゃないか」みたいな意味のない議論とかも、僕としては見ていて面白いんだけど、でも書いている人はほんとかわいそうだな、と。わざわざ「面白くないところ」を探そうとしちゃうのはもったいない。

今回のM-1でいえば、ネタも全然面白かったと思うんだけど、たとえば別角度の面白がり方の例として、何年か連続で見続けたり少し情報を深堀ることで芸人さんのストーリーや進化が頭にインプットされると、何倍も面白く思えるはず。ある意味、生き様を見るというか、リアリティーショーなんだよな。その要素が特に今年は強かった。
そう考えると2020年は、テラスハウスでは悲しい事件が起きてとてつもない議論を巻き起こしたけど、その直後に虹プロジェクトが話題になってNijiUが大ブレイクして、Abemaでは中高生の恋愛リアリティーショーが人気で、そして年末M-1がこういう大会になって、なんかいろんな意味でリアリティーショーが席巻した年だったなと。


とかいろいろ言ってるけど、こんなにM-1好きになったのここ数年なんだけれども。2021年もM-1が楽しみです。

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