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北欧のスタートアップの祭典TechBBQはグリーントランジションへ

2023年のTechBBQアップデート

2023年のTechBBQは、9月13・14日に開催された。私は、今年で2019年から5年連続の参加になる(2019年報告)。例年になく、快晴な暖かい2日間で、少々の通り雨もあったものの、広い会場の熱気も手伝って、かなり熱い2日間となった。

どんどん規模が拡大しているのが恐ろしいぐらいだ(TechBBQ)

実は、私にとって、2023年のTechBBQは、事前イベントから幕を開けた。NAVA (Nordic Asian Venture Alliance)のJulianと一緒に日本のデリゲーションに『デンマークと北欧スタートアップのエコシステム』についての事前ブリーフィングを実施したから。せっかく遠路はるばる来てもらうソウル溢れる日本人たちに、少しでも北欧社会やデジタル化について、そして今のスタートアップシーンについて知ってもらってから、現地にきて欲しい。そうじゃないと、基礎的なところの理解に時間が取られて、その先に想いを馳せるまえに帰国となってしまうということが常々問題だなぁと感じていたから。真剣な訪問者であればあるほど、日本の常識で知識武装してくる方々のちょっとズレた視点や視線、知識のギャップに直面して、せっかくの現地での生体験が浸透していってないことを歯痒く思っていた。

発表スライドの一部

今回のTechBBQは、昨年から場所を移動して、コペンハーゲン中央駅、そして日本大使館からもほど近い「Lokomotivværkstedet」で開催されている。もともと鉄道修理工場があったエリアで、大型修理工場が舞台となっている。

今回の注目

特に今回注目だなと思ったのが、グリーン・トランジションサステナビリティといったキーワードだ。すでにデジタルトランスフォーメーション(DX)の基礎敵インフラが出来上がっている北欧では、デジタルインフラがあるからこそできるサービス・ソリューションの提案が目白押し。逆に言えば、インフラがない日本ではあまり役立ちそうになかったり、DXで時間がとられている時にグリーンとか言ってられないよと、言われそうなものが多かった印象だ。

ENTOは、自動でデータを収集し政府への書類作成をしてくれる

いかに建築の管理や維持をグリーンに寄せていくかというソリューションが面白かったスタートアップのケースで考えてみると、前提として、①デジタルデータの提出が国に義務付けられている、②グリーンな建築であることが市場価値としても大切になりつつある、などがある。取得したデータで、そのままレポートを作成して、国への報告データベースに自動送信なんて、人の手を煩わせず、人のサポートをするテックとして、とても素晴らしい、美しいソリューションなんだけれども、日本にその波がくるのは10年後だろうか。

場所の使い方

前回初めてLokomotivværkstedetを使ったTechBBQであるが、今回も場所の使い方がパワーアップされているなぁと改めて感心させられた。毎年、どんどん良くなっているこの手のイベントを見ると、背後にいるプランニングの人たちの「リビングラボ」的な動きに拍手を禁じ得ない。

舞台の位置がちょっと変化し、移動しやすく参加・退出しやすくなっている。また、エリアごとに目的が分かれつつも、一体感を感じさせる物理的な区分けのないTechBBQに感銘を受けた。舞台もあれば、エリアの境ごとにあるコーヒー・ジュースプレイス(なんと無料でコーヒーやジュースが飲める場所が多々あった)、お見合いミーティングセクションなどもあり、座って休める場所やちょっとした会話ができる場所、一人ミーティングボックス、大勢で飲み食いしながら交流できる場所など、人との出会いやインタラクション、セルフリフレクションに必要な要素が全て揃っている。常々、人が集まる場所には、少なくとも3つの要素が必要だなと思っていたのだが、それがうまく物理的に現実にデザインされていた。

個人舞台なんだけれども話し合いもできる

ちなみに、3つの要素というのは、「ハレの舞台」「インタラクションの場」「リフレクションの場」である。「ハレの舞台」は、大勢に向って披露する場所、「インタラクションの場」とは、大勢の中で交流をする場所、「リフレクションの場」とは、誰にも邪魔されずに一人になれる場所の事だ。

ハレの舞台テックステージ

とはいえ、来年への注文や改良点がなかったかというとそんなことはなく、女子的には、トイレには不満があり色々と辟易した。待ち時間も空いている時でも15分ぐらいはかかった。特に、数が少ないこと、数が少ないにも関わらずユニセックストイレであったこと(知り合い男性が使ったトイレの後に入るとかその逆パターンとか)は、UXというか体験価値を大幅に下げた、残念ながら。

ツールの使い方

私がいつも感銘を受ける時効の一つは、Techの使い方であるが、以前は不満が溢れていたカンファレンスツールも、私が使い慣れたのか、使い勝手が良くなかったのか、多分両方だが、とても良い体験価値を提供してくれた。個人カレンダーがとても見やすくなっていたことと、参加者との交流がとても簡単に出来たことを、特に2つの良かった点として挙げておきたい。

1。個人カレンダーが見やすかったがゆえに、聴講したかったプレゼンを逃さず、しかもミーティングしたかった人と確実に交流できた。これは、忙しい2日間の予定調整を完璧にこなす秘書のようなもので、未来を先取りしたような気分だった。2日前に参加を決めた私の知り合いは、その2日間で一日30件前後のミーティングを実施し(自分で申請したもの、申請されたものの両方を含む)、すでに1日終わった後には声がガラガラになっていた。短時間でそれなりの意思ある人たちにあえて交流できていたのであれば、とてもうまい仕組みであると褒めて良いのではないかと思う。

魅力的なスピーカーたち。女性投資家も多い。(TechBBQ)

2。また前回も見られた(し、他の北欧のカンファレンスでも見られる)が、有名人の講演を無駄にしない工夫も注目だ。まず、全会場が吹き抜けになっているので、遠くからでも舞台で何かが行われているのがわかる。そんなことすると誰も発表者の声を聞けないんじゃない?って思うかもしれない。ところがそんなことがない。舞台の発表者はマイクを装着しており、聴講者は、現地に準備されているヘッドフォンをそのマイクにあわせることで、周囲のノイズが気にならずに少し離れていても議論がきちんと聴講できる。

このような大型イベントの視覚情報から得られる現地情報は、バカにできない。小さな小部屋に別れすぎていてお目当ての場所がわからない、舞台で何が行われているかわからないということがなく、満足なカンファレンス経験をすることができるこの方法がもっと広がって欲しいものだと思う。

大きくなりすぎの印象も持った今回のTechBBQであるが、機会があればまた来年も報告したいと思っている。

北欧のスタートアップシーンは面白い

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