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2021年:共創学会第5回年次大会

共創学会第5回年次大会が12月4〜5日、オンラインで開催された。国際学会、特に欧州系の学会は週末に開催されるのがほぼないので、「週末に学会?」と同僚からは不可思議な反応をもらった。日本の学会は週末や夕方が多いのです。

日本時間で開催の学会であったために、朝の9時から(夜中1時)夕方18:30(10時30)までの開催。朝の会は、どう頑張っても参加するのは厳しく、結局、興味深い発表をいくつも逃したのが残念だ。コロナ禍ということもありオンライン開催であるが故に、発表は可能だったわけだが、来年は、ぜひ日本で参加したいものだ。

昔、函館に行った

共創で形作られる北欧のスマートシティー市民主導はどう始まりどう続いていくのか」というタイトルで発表した私の論文は、未来大の岡本先生との議論の中で生まれたものだ。発表に対して、永田鎮也さんや三輪先生など、多くの方から質問をいただき、嬉しかったと同時にうまく説明ができずに歯痒い思いをした。時間の制限なく話したかったしもう少し対話していたら見えてきたものもありそうで、遠隔発表が切ない。CoCreationはどのように生まれるのか、市民は共創によってどうマインドを変化させるのか、どうして変化できるのか。日本の共創に見られるキーワードは「鍛錬」だという岡本先生の言葉に、北欧の共創は「無意識に社会に根付いたお作法に則って楽しむこと」だなぁということを強く感じつつ、これはどう説明したらいいのだろうかと脳内混乱状態だった。いまだに、思考は処理できてないが、とりあえず備忘録として記録しておきたい。

同じ口頭発表のセッションの発表3件はどれもとても面白かった。座長を務めていた大塚正之先生は、早稲田で法学(弁護士)をやられていて、哲学にも関心が深いという。進行補佐の石井裕之先生は、早稲田のロボット研究者。ロボットとのインタラクションによって、個人が持つ能力を最大限に引き出す方法論の構築をしているとかでとても興味深い。大会が対面だったらと…、不満を言ってもしょうがないのだが、セッション終了後に話に行くだろうなと思わされる二方だった。

APDをめぐる諸問題(中内春一郎さん)」と「地域住民の記憶を遠隔地で書き出し伝達するコミュニケーションデザインの研究(鈴木葵さん)」では当事者研究が行われていた。人の記憶をどのように次に繋いでいくかということは、私も伝統工芸の知識伝承でずっと気になっていることもでもある(Noteの記事)。伝統工芸も同じような傾向はあると思うが、土地に結びつく記憶は、確実にその自然や風土などとも関係しあっているために、別の地域に持っていくのは難しい。手紙を使った実験方法も面白いながら、どう伝わったかの分析は、目から鱗で今後の展開もとても楽しみだ。「うまれつづける<場>で研究するとは(仙波梨英子さん)」は、複数の観点が折り込まれて、悩まされつつも、終わってからも気になる発表だった。アート実践の部分は、アートという言葉では表せない手段を通じたコミュニケーションの効果について考えさせられたし、人や社会を対象とした研究の面白さと難しさにも改めて意識させられた。共創とは結局のところ、変化や時間の流れとも切り離すことはできず、変化し生まれ続けるものなんだろうから。

セッションでは、全体を通して「場」や「場所」の話が頻出し、西田幾太郎の「場所の論理」や中村雄二郎の「共通感覚論」など気になるコンセプトが次々に出て来た。当事者研究が広く行われていることを知ったもの興味深い点だ。10年前ほどの当事者研究の盛り上がりが、今、日本の学会で根付いていることを体感した時間だった。

函館の町

来年は、どうやら大牟田らしいので、ぜひとも、コロナには収束してもらい、九州に足を伸ばしたいと思う。


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